緊急開腹止血時に見逃された外傷性十二指腸損傷の1例

症例は50歳女性。自宅で娘と口論になり文化包丁で全身を刺され受傷。来院時はショックバイタルであり,かつ右臍部から大網脱出を認めたため腹腔内出血による出血性ショックと診断し緊急開腹止血術となった。手術診断は横行結腸間膜・大網損傷であったが明らかな腸管損傷や後腹膜の異常も認めなかった。術後4日目に腹痛出現。腹部CTで十二指腸周囲にフリーエアーを認めたため外傷性十二指腸損傷の診断で再手術となった。十二指腸水平脚に径1cm大の穿孔部を認め,閉鎖後に空腸を用いパッチとした。術後独歩退院となった。ショック患者では詳細な術前診断は不可能であることが多く,正確な術中診断が求められる。鋭的損傷では刺創経路を考慮...

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Bibliographic Details
Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 31; no. 4; pp. 685 - 687
Main Authors 上西, 紀夫, 兼子, 晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2011
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.31.685

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Summary:症例は50歳女性。自宅で娘と口論になり文化包丁で全身を刺され受傷。来院時はショックバイタルであり,かつ右臍部から大網脱出を認めたため腹腔内出血による出血性ショックと診断し緊急開腹止血術となった。手術診断は横行結腸間膜・大網損傷であったが明らかな腸管損傷や後腹膜の異常も認めなかった。術後4日目に腹痛出現。腹部CTで十二指腸周囲にフリーエアーを認めたため外傷性十二指腸損傷の診断で再手術となった。十二指腸水平脚に径1cm大の穿孔部を認め,閉鎖後に空腸を用いパッチとした。術後独歩退院となった。ショック患者では詳細な術前診断は不可能であることが多く,正確な術中診断が求められる。鋭的損傷では刺創経路を考慮し,今回のように横行結腸間膜・大網損傷部位の血腫を認めた場合はその後面の後腹膜臓器である十二指腸損傷や膵損傷を疑い,周囲の横行結腸間膜の剥離を行うことで損傷の有無を確認する必要があると考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.31.685