本邦の新生児集中治療室における医療器具関連感染の多施設サーベイランス

本邦には新生児集中治療室(neonatal intensive care unit: NICU)の医療器具関連感染に関するベンチマークデータはない.今回,9施設のNICUで出生体重1500 g以下の患者を対象とし,全米医療安全ネットワーク(National Healthcare Safety Network: NHSN)のサーベイランス手法を用いて2010年から2011年までのデータを収集した.感染の判定には米国NHSNの診断定義を使用した.中心ライン関連血流感染(central line-associated bloodstream infection: CLABSI)数は10件で,CLAB...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 29; no. 4; pp. 256 - 264
Main Authors 大城, 誠, 星野, 智子, 徳永, 康行, 岡崎, 薫, 戸石, 悟司, 坂木, 晴世, 美島, 路恵, 大木, 康史, 木下, 大介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 2014
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.29.256

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Summary:本邦には新生児集中治療室(neonatal intensive care unit: NICU)の医療器具関連感染に関するベンチマークデータはない.今回,9施設のNICUで出生体重1500 g以下の患者を対象とし,全米医療安全ネットワーク(National Healthcare Safety Network: NHSN)のサーベイランス手法を用いて2010年から2011年までのデータを収集した.感染の判定には米国NHSNの診断定義を使用した.中心ライン関連血流感染(central line-associated bloodstream infection: CLABSI)数は10件で,CLABSI発生率は1000 device-daysあたり750 g以下群が0.7件,751–1000 g群0.7件,1001–1500 g群0.5件であった.また,臨床医がCLABSIと判定したもののNHSNの定義に該当しなかった症例が17件あった.人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia: VAP)発生率は,1000 device-daysあたり750 g以下群3.3件,751–1000 g群5.0件,1001–1500 g群3.6件であった.CLABSI発生率はNHSNデータよりも低く,VAP発生率はNHSNデータよりも高かった.中心ラインと人工呼吸器の使用比は,750 g以下群が0.28と0.37,751–1000 g群0.26と0.22,1001–1500 g群0.22と0.08であった.中心ライン使用比はNHSNデータよりも低く,人工呼吸器使用比はNHSNと同等の値であった.今後は国際比較が可能なサーベイランスシステムの構築や,医療器具関連感染のリスク因子解析と感染対策の検証が必要である.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.29.256