院内多発外傷連携によって救肢した外傷性腸骨動脈閉塞症の1例

四肢の急性動脈閉塞症は疼痛・蒼白・運動麻痺などの虚血所見を示す。今回,腹部鈍的外傷の症例で下肢虚血の症状・所見がなく,腹腔内損傷に気を取られたため全身CTの初期読影で腸骨動脈閉塞が診断できなかったが,すみやかな放射線科読影により救肢できた経験をした。55歳男性が交通事故で腹部鈍的外傷を受け,強い腹痛を訴えたが下肢虚血の症状・所見がなく,CTで消化管穿孔・腹腔内出血と診断して緊急手術を始めた。術中に放射線科医が左総腸骨動脈閉塞を指摘し,血行再建を行い救肢した。緊急治療が必要な疾患に対し早期に治療介入するには,外傷時全身CTでは系統的な初期読影が必要であり,「FACT(Focused Assess...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 36; no. 6; pp. 1099 - 1102
Main Authors 西川, 佳友, 高須, 惟人, 川上, 賢一, 春木, 伸裕, 伊藤, 直, 江田, 匡仁, 原田, 幸志朗, 辻, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2016
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.36.1099

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Summary:四肢の急性動脈閉塞症は疼痛・蒼白・運動麻痺などの虚血所見を示す。今回,腹部鈍的外傷の症例で下肢虚血の症状・所見がなく,腹腔内損傷に気を取られたため全身CTの初期読影で腸骨動脈閉塞が診断できなかったが,すみやかな放射線科読影により救肢できた経験をした。55歳男性が交通事故で腹部鈍的外傷を受け,強い腹痛を訴えたが下肢虚血の症状・所見がなく,CTで消化管穿孔・腹腔内出血と診断して緊急手術を始めた。術中に放射線科医が左総腸骨動脈閉塞を指摘し,血行再建を行い救肢した。緊急治療が必要な疾患に対し早期に治療介入するには,外傷時全身CTでは系統的な初期読影が必要であり,「FACT(Focused Assessment with CT for Trauma)からはじめる3段階読影」は有用である。また,放射線科医による読影・多断面再構築像作成での読影サポートなど,院内多発外傷連携が重要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.36.1099