二酸化窒素の急性暴露によるラット心機能の変化

NO2が心機能に及ぼす影響を調べる目的で, ラットに10ppm, 20ppmおよび40ppmのNO2を3時間暴露し, 心電図記録を行った。結果を以下に述べる。 1) 10ppmでは暴露中, 心拍数の著変がみられなかった。20ppmおよび40ppmでは暴露開始後約1時間以内に心拍数は著明に減少し始め, 暴露前のレベルの30∼60%にまで低下した。 2) 10dpmでは異常心電図が出現しなかったが, 20ppm以上の暴露では, 心拍減数の少とともに房室ブロックや期外収縮などの不整脈, P波の異常などの心電図所見が得られた。とくに徐脈と房室ブロックは必ず観察された。また20ppm以上の暴露で, P-...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 36; no. 2; pp. 550 - 559
Main Authors 嵯峨, 井勝, 局, 博一, 鈴木, 明, 市瀬, 孝道, 久保田, 憲太郎, 織田, 肇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 1981
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.36.550

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Summary:NO2が心機能に及ぼす影響を調べる目的で, ラットに10ppm, 20ppmおよび40ppmのNO2を3時間暴露し, 心電図記録を行った。結果を以下に述べる。 1) 10ppmでは暴露中, 心拍数の著変がみられなかった。20ppmおよび40ppmでは暴露開始後約1時間以内に心拍数は著明に減少し始め, 暴露前のレベルの30∼60%にまで低下した。 2) 10dpmでは異常心電図が出現しなかったが, 20ppm以上の暴露では, 心拍減数の少とともに房室ブロックや期外収縮などの不整脈, P波の異常などの心電図所見が得られた。とくに徐脈と房室ブロックは必ず観察された。また20ppm以上の暴露で, P-P間隔, P-Q間隔, QRS持続時間が明瞭に延長した。 3) 暴露中に硫酸アトロピンを投与すると, 房室ブロックなどの異常心電図は消失した。またP-P間隔, P-Q間隔およびQRS持続時間は硫酸アトロピンの投与によって, 著明に短縮した。 4) 3)の成績から20ppm以上の暴露で生じる心機能異常には, 主に迷走神経が関与していることが示唆された。 5) NO2の急性毒性の一つとして, 心臓機能に明瞭な影響のあることを考慮すべきであると思われた。
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.36.550