顎下部に発生した隆起性皮膚線維肉腫の1例

隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans: DFSP)は皮膚組織に生じる悪性軟部腫瘍であり,耳鼻咽喉科医として遭遇する頻度は非常に稀な疾患である.今回我々は顎下部に発生したDFSPを経験したので報告する.症例は26歳男性で,3ヵ月前から頸部腫瘤を自覚し当院を受診した.術前の穿刺細胞診では診断がつかず,診断・治療目的に腫瘍摘出術を施行しDFSPの診断となった.DFSPはComputed Tomography(CT)で,造影増強効果のある孤立性の皮下結節を認め,病理検査で花むしろ状構造の紡錘形線維芽細胞の増殖が特徴的であり,免疫染色ではCD34が陽性となる...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 67; no. 1; pp. 41 - 45
Main Authors 由井, 亮輔, 和田, 弘太, 島田, 顕央, 藤川, 桃紀, 加藤, 孝邦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.02.2024
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.67.1_41

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Summary:隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans: DFSP)は皮膚組織に生じる悪性軟部腫瘍であり,耳鼻咽喉科医として遭遇する頻度は非常に稀な疾患である.今回我々は顎下部に発生したDFSPを経験したので報告する.症例は26歳男性で,3ヵ月前から頸部腫瘤を自覚し当院を受診した.術前の穿刺細胞診では診断がつかず,診断・治療目的に腫瘍摘出術を施行しDFSPの診断となった.DFSPはComputed Tomography(CT)で,造影増強効果のある孤立性の皮下結節を認め,病理検査で花むしろ状構造の紡錘形線維芽細胞の増殖が特徴的であり,免疫染色ではCD34が陽性となる.治療の第一選択は外科的拡大切除である.切除不能例に対する放射線治療や,遠隔転移に対する分子標的薬投与の効果も報告されている.予後に関しては,遠隔転移が1%程度であり比較的良好であるが,局所再発の頻度が高い.本症例では術前にDFSPの診断に至らなかったため,十分な切除範囲を確保することができなかった.5年以上経過して局所再発を来す例も報告されているため,本症例においても長期間の観察が必要であると考える.
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.67.1_41