脳梗塞の病型が再発リスク指標の精度に及ぼす影響

【はじめに、目的】 脳梗塞は動脈硬化や心臓病に起因する疾患である。急性期医療 の拡充により軽症脳梗塞患者が増加し、リハビリテーション領域にも再発予防の取り組みが求められている。Stroke Prognosis Instrument II (SPI-II)は、既往歴から構成される再発 リスク指標であり、理学療法士でも簡便に評価できる。我々は、予備的研究からSPI-IIが1 年以内の脳梗塞再発を予測する有益な指標であることを確認した。一方、脳梗塞は病型により再発危険因子が異なるため、SPI-Ⅱの有益性も一様でない可能性がある。そこで本研究は、脳梗塞を病型で分類した場合にSPI-Ⅱの予測精度が異なる...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 2.Suppl.No.1; p. 221
Main Authors 濵野, 祐樹, 福田, 京佑, 近藤, 壮一, 岡田, 康佑, 甘利, 貴志, 宮原, 拓也, 泉谷, ひかる, 平田, 恭子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_221

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Summary:【はじめに、目的】 脳梗塞は動脈硬化や心臓病に起因する疾患である。急性期医療 の拡充により軽症脳梗塞患者が増加し、リハビリテーション領域にも再発予防の取り組みが求められている。Stroke Prognosis Instrument II (SPI-II)は、既往歴から構成される再発 リスク指標であり、理学療法士でも簡便に評価できる。我々は、予備的研究からSPI-IIが1 年以内の脳梗塞再発を予測する有益な指標であることを確認した。一方、脳梗塞は病型により再発危険因子が異なるため、SPI-Ⅱの有益性も一様でない可能性がある。そこで本研究は、脳梗塞を病型で分類した場合にSPI-Ⅱの予測精度が異なるのかを検証した。 【方法】 対象は脳梗塞患者1562名とした。群分けは初発から1年以内に脳梗塞で再入院した者を再発群、それ以外を非再発群とした。 情報収集は、初発時点における年齢、性別、BMI、退院時mRS、脳梗塞の病型、抗血小板薬処方の有無、既往歴、喫煙歴を収集した。統計解析は、ラクナ梗塞をモデル1、アテローム血栓性 脳梗塞をモデル2、心原性脳塞栓症をモデル3とし、各モデルにおける従属変数を1年以内の再発の有無、独立変数を主要評価項目にSPI-Ⅱ、共変量に同じく再発リスク指標であるEssen Stroke Risk Score (ESRS)を設定した。BMIと抗血小板薬の処方を交絡因子として傾向スコアを算出し、各モデルで強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を実施した。統計学的有意水準は5%とした。 【結果】 対象の内訳はモデル1[112名]、モデル2[257名]、モデル 3[97名]であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、モ デル1・2はSPI-ⅡがESRSに比べて、1年以内の再発を予測する有意な指標であった (モデル1:OR比 SPI-Ⅱ 0.56/ESRS 0.57 R2乗 0.46、モデル2:OR比 SPI-Ⅱ 0.58/ESRS 0.80 R2乗 0.33)。 一方、モデル3はSPI-Ⅱ、ESRS共に有意な指標でなかった。 【考察】 本研究よりSPI-Ⅱは動脈硬化に由来するラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に対して有益な指標であることが確認された。本研究成果は、脳梗塞再発リスク指標において、病型を考慮する必要性を示唆しており、理学療法士が精度の高い指標に基づいて、予防的介入を行う点で重要な知見となり得る。 【倫理的配慮】 本研究は上尾中央総合病院の倫理委員会の承認を受けた後,ヘルシンキ宣言に則り,対象者の個人情報保護に十分配慮して実施した (承認番号:1091)。
Bibliography:YO-13-3
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_221