感染性胸腹部大動脈瘤術後に発生した医原性横隔膜ヘルニアの1例

症例は74歳,男性。既往症として胸椎破裂骨折にて手術後,化膿性椎体炎,胸腹部大動脈瘤をきたし,人工血管置換術を受けていた。今回,背部痛を主訴に当院受診し,化膿性椎体炎再燃と診断され整形外科に入院した。入院時CTで胃の左胸腔内脱出を認めていたが,消化器症状の訴えがなかったため経過観察されていた。入院4日目に食欲不振・嘔吐を認め外科紹介となり,胸部X線で胃の脱出が増大していた。非還納性左横隔膜ヘルニアによる消化管通過障害の診断で緊急手術を施行した。開腹すると横隔膜大動脈裂孔を通して胃の大部分が左胸腔内に脱出していた。胃の一部を切開し,胃内容物の吸引によって胃内減圧後腹腔内に還納し,横隔膜欠損部を縫...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 36; no. 5; pp. 931 - 935
Main Authors 吉田, 祐, 山口, 明夫, 村上, 真, 森川, 充洋, 小練, 研司, 五井, 孝憲, 廣野, 靖夫, 片山, 寛次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2016
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.36.931

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Summary:症例は74歳,男性。既往症として胸椎破裂骨折にて手術後,化膿性椎体炎,胸腹部大動脈瘤をきたし,人工血管置換術を受けていた。今回,背部痛を主訴に当院受診し,化膿性椎体炎再燃と診断され整形外科に入院した。入院時CTで胃の左胸腔内脱出を認めていたが,消化器症状の訴えがなかったため経過観察されていた。入院4日目に食欲不振・嘔吐を認め外科紹介となり,胸部X線で胃の脱出が増大していた。非還納性左横隔膜ヘルニアによる消化管通過障害の診断で緊急手術を施行した。開腹すると横隔膜大動脈裂孔を通して胃の大部分が左胸腔内に脱出していた。胃の一部を切開し,胃内容物の吸引によって胃内減圧後腹腔内に還納し,横隔膜欠損部を縫合閉鎖した。今回の横隔膜ヘルニアは人工血管周囲を被覆した大網に牽引される形で大動脈裂孔から胃が胸腔内に脱出したと考えられ,非常にまれではあるが手術に伴う合併症の一つとして認識しておく必要があると考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.36.931