タイ人AIDS患者の菌血症例から分離されたPenicillium marneffei

2006年本邦において,タイ人AIDS患者の血液培養よりPenicillium marneffei が分離された.本菌種による感染報告例は本症例が3例目となるが,培養に成功した例はわが国では初めてと考えられる.患者は,41歳,タイ東北部出身の女性で,約10年前に来日.その後もしばしば一時帰国していた.AIDS治療中に発熱のために行った血液培養より,培養初期に白色,やがて暗赤色となる集落が分離され,菌学的および分子生物学的手法によりP. marneffei と同定され,患者はマルネッフェイ型ペニシリウム症と診断された.アムホテリシンBおよびミカファンギンの投薬により患者は回復し,引き続き通院し経...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本医真菌学会雑誌 Vol. 49; no. 3; pp. 205 - 209
Main Authors 井出, 京子, 上原, 雅江, 高山, 義浩, 鎗田, 響子, 羽毛田, 牧夫, 亀井, 克彦, 佐野, 文子, 西村, 和子, 永井, 啓子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2008
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-4804
1882-0476
DOI10.3314/jjmm.49.205

Cover

More Information
Summary:2006年本邦において,タイ人AIDS患者の血液培養よりPenicillium marneffei が分離された.本菌種による感染報告例は本症例が3例目となるが,培養に成功した例はわが国では初めてと考えられる.患者は,41歳,タイ東北部出身の女性で,約10年前に来日.その後もしばしば一時帰国していた.AIDS治療中に発熱のために行った血液培養より,培養初期に白色,やがて暗赤色となる集落が分離され,菌学的および分子生物学的手法によりP. marneffei と同定され,患者はマルネッフェイ型ペニシリウム症と診断された.アムホテリシンBおよびミカファンギンの投薬により患者は回復し,引き続き通院し経過を観察された.分離株をサブロー・ブドウ糖寒天平板培地にて25℃で培養した集落は,初め白色フェルト状で,次第に黄色から黄緑色となり,さらに培地内に深紅色色素を拡散した.分生子頭は散開性で,その先端に分生子の連鎖を形成していた.ブレイン・ハート・インフュージョン寒天斜面培地にて35℃で培養すると,細かい襞のある灰白色膜様集落を形成し,顕微鏡的には短菌糸より構成されていた.なお,本分離株のリボゾームRNA遺伝子internal transcribed spacer領域の配列は,既知株と100%一致し,DDBJにAB298970として登録されている.  臨床検査分野においては,今後HIV感染症の拡散と人々の移動のグローバル化に伴い,病原性輸入真菌症に遭遇する危険性が高まることが予測され,専門機関との連携を含め,初期対応が可能となるような体制作りが必要であると考える.
ISSN:0916-4804
1882-0476
DOI:10.3314/jjmm.49.205