ロコモティブシンドロームとプレゼンティズムとの関連:病院職員を対象とした横断研究

【目的】高齢者の健康寿命延伸を目的としてロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の改善や予防の対策は重要な課題である。しかし、近年では若年成人から労働者まで幅広くロコモ該当者の存在が判明し、その世代に応じた対策が求められている。また、労働者が健康障害を抱えたまま就業している状況を示すプレゼンティズムの改善は企業経営の重要な課題となっている。労働者において、運動機能低下を示すロコモの存在はプレゼンティズムを悪化させる要因の一つと推測され、身体運動負荷量が多く職責の大きい医療従事者においては、その影響の強さが予想される。本研究では、病院職員におけるロコモとプレゼンティズムとの関係について検討するこ...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.2; p. 119
Main Authors 山本, 泰弘, 北畠, 義典, 岸本, 俊樹, 石橋, 英明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_119

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Summary:【目的】高齢者の健康寿命延伸を目的としてロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の改善や予防の対策は重要な課題である。しかし、近年では若年成人から労働者まで幅広くロコモ該当者の存在が判明し、その世代に応じた対策が求められている。また、労働者が健康障害を抱えたまま就業している状況を示すプレゼンティズムの改善は企業経営の重要な課題となっている。労働者において、運動機能低下を示すロコモの存在はプレゼンティズムを悪化させる要因の一つと推測され、身体運動負荷量が多く職責の大きい医療従事者においては、その影響の強さが予想される。本研究では、病院職員におけるロコモとプレゼンティズムとの関係について検討することを目的とした。【方法】本研究に同意を得た一般急性期病院職員329名(男性67名・女性262名)を対象とした。ロコモ評価は、立ち上がりテスト(ロコモ 陽性:40cm台からの片脚起立困難)、2ステップテスト(ロコモ陽性:2ステップ値[2歩幅cm÷身長cm]1.3未満)を実施し、自記式質問紙にて疼痛や身体活動性、心理的不安を評価するロコモ25(0-100点、加点にて不良。ロコモ陽性:7点以上)を用いて評価した。プレゼンティズムの評価は労働機能障害の程度を測定するWork Functioning Impairment Scale: Wfun(7-35点、加点にて不良。プレゼンティズム判定:14点以上)を用いた。統計解析は3つのテストにて1つでも陽性であればロコモとされる標準的判定に加え、各テストでの陽性の有無とプレゼンティズムの有無に対してχ2検定を実施した。また、説明変数にロコモ度に関する指標、目的変数にプレゼンティズムの有無、調整変数に性別、年齢、職種としたロジスティック回帰分析を実施した。統計処理はR ver.2.8.1を使用し、有意水準は5%とした。【結果】ロコモ陽性者数について、標準的判定は103名(31.3%)、2ステップテストは14名(4.3%)、立ち上がりテストは52名(15.8%)、ロコモ25は66名(20.1%)であった。プレゼンティズム該当者は103名(39.5%)であった。χ2検定の結果、ロコモ25(χ2(1)=11.27, p<.001)のロコモ判定者は有意にプレゼンティズムと判定されていた。ロジスティック回帰分析の結果、ロコモ25(オッズ比:3.81,95%CI: 2.64-7.22)であった。【結論】対象者に医療専門職が多く含まれ、立位作業の多さにより労働生産性に影響を与える程度の運動機能低下は無く、日常的な疼痛や生活活動性に関連した不安が労働生産性に影響を与えていた可能性が考えられる。ロコモに該当する病院職員のプレゼンティズムへの対策には、単純な運動機能の向上を図るだけではなく、心理的不安などの心理・社会的要因も含めた包括的な対策が必要であると考えられる。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り、伊奈病院倫理審査委員会(No.75)の承認を得た。全対象者に個人情報は保護されることを口頭と紙面で説明し、調査実施の同意を得た。
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_119