精神療法と行動療法の統合の可能性について(<特集>精神療法と行動療法)
一般に心理療法には, 理論的側面と, 治療的側面とがある. 例えば, 精神分析と行動療法について言えば, 理論的側面としては, 前者は精神力動として, 幼時の心理的葛藤に原因を求めようとするし, 後者は, 条件づけによる学習過程に原因を求めようとするし, お互にその理論的立場を異にしている. 前者が原因を遠い過去に求め, 後者が原因を近い過去に求めているといってもよいかも知れない. このように, 理論的には両者は相容れない所が多いが, 臨床の実際から言うと, 精神分析的アプローチと, 行動療法的アプローチを, 併用ないし統合して実施せざるを得ない場合がある. 心理療法の歴史を振り返ってみると,...
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Published in | 行動療法研究 Vol. 5; no. 1-2; p. 1 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
31.03.1980
日本行動療法学会 |
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ISSN | 0910-6529 2424-2594 |
DOI | 10.24468/jjbt.5.1-2_1 |
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Summary: | 一般に心理療法には, 理論的側面と, 治療的側面とがある. 例えば, 精神分析と行動療法について言えば, 理論的側面としては, 前者は精神力動として, 幼時の心理的葛藤に原因を求めようとするし, 後者は, 条件づけによる学習過程に原因を求めようとするし, お互にその理論的立場を異にしている. 前者が原因を遠い過去に求め, 後者が原因を近い過去に求めているといってもよいかも知れない. このように, 理論的には両者は相容れない所が多いが, 臨床の実際から言うと, 精神分析的アプローチと, 行動療法的アプローチを, 併用ないし統合して実施せざるを得ない場合がある. 心理療法の歴史を振り返ってみると, 同じように理論的基盤を有しているにもかかわらず, 技法的には色々と異なったニュアンスのものがある. 例えば精神分析的な治療法についてみても, 理論を異にする行動療法と実際面でもなかなか統合し難いものと, 比較的統合し易いものがある. 例えば, フロイドの正統的な精神分析は, 他の行動療法となじみ難いが, エリック・バーンが創始した交流分析は, ゲーム分析とか, 行動変容といった, 行動科学的な用語を使っており, 技法的にも分析的な諸治療法と併用し易い. |
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ISSN: | 0910-6529 2424-2594 |
DOI: | 10.24468/jjbt.5.1-2_1 |