要介護高齢者における歯科と介護との連携の必要性を示す1症例 : 超高齢社会におけるかかりつけ歯科医の役割を考える

要介護1の高齢者が自立して歯科医院へ通院していたところ,転倒・骨折して入院となったので,義歯不適の訴えを往診で対応し,悪性の腫瘍性病変が疑われた症例に遭遇した.その後,短期間にケアマネジャー,内科担当医,口腔外科専門医,入所施設への連絡,依頼,情報提供が必要となった症例を報告する.平成25年8月初診,義歯不適を主訴に当院受診し経過良好にて一旦終了とした.平成26年3月上旬に,再度義歯不適を訴え受診した.下顎歯肉が著しく腫脹していたため口腔外科専門医への紹介を念頭に置いた経過観察が必要であったが,次回の予約が無断キャンセルされた.その2週間後に患者から,「転倒し骨折して入院となった.週末に退院し...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 65; no. 1; pp. 43 - 47
Main Authors 池田, 美子, 本多, 丘人, 原田, 祥二, 藤田, 真理, 原田, 晴子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 30.01.2015
日本口腔衛生学会
Subjects
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.65.1_43

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Summary:要介護1の高齢者が自立して歯科医院へ通院していたところ,転倒・骨折して入院となったので,義歯不適の訴えを往診で対応し,悪性の腫瘍性病変が疑われた症例に遭遇した.その後,短期間にケアマネジャー,内科担当医,口腔外科専門医,入所施設への連絡,依頼,情報提供が必要となった症例を報告する.平成25年8月初診,義歯不適を主訴に当院受診し経過良好にて一旦終了とした.平成26年3月上旬に,再度義歯不適を訴え受診した.下顎歯肉が著しく腫脹していたため口腔外科専門医への紹介を念頭に置いた経過観察が必要であったが,次回の予約が無断キャンセルされた.その2週間後に患者から,「転倒し骨折して入院となった.週末に退院しすぐに介護施設へ入所するが,その前に一度歯ぐきの具合を診て欲しい.」と電話があった.翌日病院に往診したところ悪性を思わせる腫瘤を認めたため,早急に口腔外科を受診できるよう各方面へ連絡,調整を行った.在宅診療では多職種との連携の重要性が指摘されている.本症例では要介護状態が歯科治療を妨げることがなかったため,ケアマネジャーの所属や連絡先を把握していなかった.ケアマネジャーと連携していれば患者と連絡が途絶えることなく歯肉病変の変化を滞りなく経過観察し,より早期に口腔外科へ紹介できたと思われる.かかりつけ歯科医においては,要介護状態が軽度で歯科訪問診療の必要性のない通院可能な患者に関してもケアマネジャーとの連携が望ましいと思われた.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.65.1_43