環境によるさまざまな健康リスク

世界保健機関は,2016年「健康的な環境による疾病予防―環境リスクによる疾病負荷の国際評価」を発表した.環境と労働に関する100以上の疾病のシステマティックレビューを行い,全世界の死亡の23%(疾病負荷の22%)と 5 歳未満の子供の死亡の26%は環境の改善により削減可能であり,世界的に環境の改善が健康と福祉を促進できることを示した.日本では,特に1950年代以降,鉱山廃水,工場排水などの水環境,それらに汚染された魚や米,大気汚染などによる激甚な公害による健康被害が引き起こされたが,その後政策面,技術面,管理面,研究面で様々な改善に取り組んできた.しかし,公害での対応では厳密な科学的知見の集積...

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Published in保健医療科学 Vol. 67; no. 3; pp. 241 - 254
Main Authors 浅見, 真理, 欅田, 尚樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立保健医療科学院 31.08.2018
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ISSN1347-6459
2432-0722
DOI10.20683/jniph.67.3_241

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Summary:世界保健機関は,2016年「健康的な環境による疾病予防―環境リスクによる疾病負荷の国際評価」を発表した.環境と労働に関する100以上の疾病のシステマティックレビューを行い,全世界の死亡の23%(疾病負荷の22%)と 5 歳未満の子供の死亡の26%は環境の改善により削減可能であり,世界的に環境の改善が健康と福祉を促進できることを示した.日本では,特に1950年代以降,鉱山廃水,工場排水などの水環境,それらに汚染された魚や米,大気汚染などによる激甚な公害による健康被害が引き起こされたが,その後政策面,技術面,管理面,研究面で様々な改善に取り組んできた.しかし,公害での対応では厳密な科学的知見の集積を求め,対応に時間を要したことも否めず,今後も基準や制度の改正のみならず,予防的アプローチに基づくリスク評価やリスク管理に基づくリスクコミュニケーションを実施し,常に環境改善の枠組みを検討しなければならない.地球規模での環境改善への貢献や将来を見越した政策の検討も求められている.加えて,地域の人口減少や人手不足,調査の予算不足なども踏まえ,持続可能性も考慮した施策を検討する必要がある.
ISSN:1347-6459
2432-0722
DOI:10.20683/jniph.67.3_241