米国における術野殺菌消毒薬の有効性評価法の日本人での評価

米国では「手術部位の皮膚消毒」を効能とする殺菌消毒薬の評価方法として,米国食品医薬品局から公表されたTentative Final Monograph(FDA-TFM)が用いられている.それでは,2週間以上,被験者に全身性又は局所性の抗菌薬などを使用制限し,かつ非抗菌性の衛生ケア用品を使用させて順応させた後,試験薬を塗布し,その10分後に皮膚常在細菌数が,腹部では2.0 log10 CFU/cm2,鼠径部では3.0 log10 CFU/cm2減少することを要求している.このため,被験者は試験薬塗布前に十分な細菌数を持つことが必要であるが,日本人の皮膚常在細菌数が上記条件下で十分に増加するか否か...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 26; no. 4; pp. 203 - 209
Main Authors 高附, 真樹子, 駒形, 安子, 飯島, 肇, 菊野, 理律子, 蓮沼, 智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 2011
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.26.203

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Summary:米国では「手術部位の皮膚消毒」を効能とする殺菌消毒薬の評価方法として,米国食品医薬品局から公表されたTentative Final Monograph(FDA-TFM)が用いられている.それでは,2週間以上,被験者に全身性又は局所性の抗菌薬などを使用制限し,かつ非抗菌性の衛生ケア用品を使用させて順応させた後,試験薬を塗布し,その10分後に皮膚常在細菌数が,腹部では2.0 log10 CFU/cm2,鼠径部では3.0 log10 CFU/cm2減少することを要求している.このため,被験者は試験薬塗布前に十分な細菌数を持つことが必要であるが,日本人の皮膚常在細菌数が上記条件下で十分に増加するか否かの情報はない. そこで,被験者をFDA-TFMを参考に順応させ,日本人の腹部及び鼠径部の皮膚常在細菌数と代表的な常在菌属を含む5種類の菌属の菌数を確認した.その結果,腹部では順応させても細菌数の有意な増加が認められず,細菌数減少を評価するために十分な細菌数を持つ被験者を確保することが難しいことが示唆された.しかし,鼠径部の細菌数は順応によって有意な増加をし,十分な細菌数を持つ被験者を高い割合で確保できると考えられた.また,順応により,特に菌叢の乱れは生じないことが示唆された.FDA-TFMに基づいた試験を実施する場合,腹部の被験者確保は難しいものの,日本人でも細菌数減少を指標とした新規殺菌消毒薬の有効性評価は可能ではないかと考えられた.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.26.203