地域高齢者におけるsubjective ageと運動定着および新規要介護発生との関係 ~KAGUYAプロジェクト
【はじめに】高齢者におけるsubjective age(主観的に感じる年齢)と実年齢(chronological age)との差は運動機能,認知機能など様々な健康関連指標と関連することが報告されている。しかし,この差が運 動定着や要介護状態の発生リスクと関係するかについて前向きに調査した研究はない。本研究の目的は大学と自治体の共同事業として実施したKAGUYAプロジェクトによる縦断研究データからsubjective ageと運動の定着性および新規要介護状態の発生との関係を明らかにする事である。【方法】2016年に奈良県A町在住の地域高齢者8,004名を対象に郵送式調査を行い,返信のあった3,8...
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| Published in | Japanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.2; p. 66 |
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| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本予防理学療法学会
01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2758-7983 |
| DOI | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_66 |
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| Summary: | 【はじめに】高齢者におけるsubjective age(主観的に感じる年齢)と実年齢(chronological age)との差は運動機能,認知機能など様々な健康関連指標と関連することが報告されている。しかし,この差が運 動定着や要介護状態の発生リスクと関係するかについて前向きに調査した研究はない。本研究の目的は大学と自治体の共同事業として実施したKAGUYAプロジェクトによる縦断研究データからsubjective ageと運動の定着性および新規要介護状態の発生との関係を明らかにする事である。【方法】2016年に奈良県A町在住の地域高齢者8,004名を対象に郵送式調査を行い,返信のあった3,871名から要介護認定者を除き,2019年に追跡調査が可能であった2,357名を分析対象とした。subjective ageの評価は「気持ちの年齢についてお答えください」という問いに対して「年相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上である」の選択肢を設定した。その他の評価には年齢などの基本情報に加え,疾病負荷,高次生活機能(老研式活動能力指標およびJST版活動能力指標),抑うつ評価(GDS-5),一般性自己効力感(GSES),運動定着(週1回以上の運動実施)などを聴取し,追跡調査時にはこれらに加え,対象者の新規要介護認定の発生状況についてデータ突合を行った。データ解析はsubjective ageの分類によるベースライン時および追跡調査時の項目間比較および新規要介護状態の発生との関係を解析した。項目間の比較には一元配置分散分析およびχ二乗検定(残差検定)を行い,新規要介護状態の発生への影響因子の解析には二項ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】ベースライン時において「実際の年齢より若い」と感じている者は他群より高次生活機能得点,一般性自己効力感が有意に高く,週1 回以上の運動を行っている者が多かった。これらの関係性は追跡調査時においても同様であった。またベースライン時に「実際の 年齢よ り若い」と感じている者は他群に比較して新規要介護状態となる者が有意に少なかった。新規要介護状態の発生を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果では,年齢,性別など他の因子を調整しても「実際の年齢より若い」と感じることが要介護状態の発生に独立して影響する防御因子であった(OR=0.22, 95%CI;0.06-0.78, P=0.02,参照カテゴリー「実際の年齢より上である」)。【結論】地域在住の一般高齢者において自身の気持ちを若く保つことは,運動が定着しやすく,要介護リスクを減少させる可能性が考えられた。これらの結果は地域高齢者に対する介護予防や健康増進の領域における心理的アプローチの重要性を示唆するものと考えられる。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り,全ての対象者に研究参加対する同意を得て実施した。参加者氏名は本研究独自のIDを自治体から付与された状態で提供され,研究者が個人を特定できない状態で解析を実施した。また研究計画は畿央大学研究倫理委員会の承認を受け実施した。(承認番号H27-34-2)。 |
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| ISSN: | 2758-7983 |
| DOI: | 10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_66 |