腹腔鏡下に診断・治療した外傷性虫垂離断の1例

症例は46歳,男性.就業中に木材を加工する機械から70cm大の木材が飛び出し,下腹部を受傷した.強い腹痛を認め,近医を受診し臓器損傷が疑われたため,当院へ転院搬送された.来院時,バイタルサインの異常は認めなかったが,右下腹部に圧痛と反跳痛を認めた.腹部造影CTでは肝周囲に腹水が貯留し,右下腹部に少量の腹腔内遊離ガスを認めた.以上より,外傷性回腸穿孔を疑い,同日緊急で腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると虫垂が離断されており,外傷性虫垂離断と診断し虫垂切除術を施行した.他の臓器に損傷は認めなかった.腹部鈍的外傷による腸管損傷の多くは小腸であり,虫垂離断は極めてまれである.従来,腹部外傷に対し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 10; pp. 1850 - 1854
Main Authors 柴田, 孝弥, 辻, 恵理, 安東, 美の里, 寺西, 太, 野々山, 敬介, 柴田, 直史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.1850

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Summary:症例は46歳,男性.就業中に木材を加工する機械から70cm大の木材が飛び出し,下腹部を受傷した.強い腹痛を認め,近医を受診し臓器損傷が疑われたため,当院へ転院搬送された.来院時,バイタルサインの異常は認めなかったが,右下腹部に圧痛と反跳痛を認めた.腹部造影CTでは肝周囲に腹水が貯留し,右下腹部に少量の腹腔内遊離ガスを認めた.以上より,外傷性回腸穿孔を疑い,同日緊急で腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると虫垂が離断されており,外傷性虫垂離断と診断し虫垂切除術を施行した.他の臓器に損傷は認めなかった.腹部鈍的外傷による腸管損傷の多くは小腸であり,虫垂離断は極めてまれである.従来,腹部外傷に対して開腹手術が行われてきたが,近年では腹腔鏡下手術の有用性も報告されている.特に受傷早期の腹腔鏡下手術によって,診断の遅れや過剰な開腹手術を回避できると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.1850