A-1. 3抗体陽性リン脂質抗体症候群に対する肺動脈内膜摘除術
「背景と目的」: 抗リン脂質抗体症候群(APS)は反復する動静脈血栓症や習慣性流産をきたす自己免疫疾患である. 本疾患は慢性血栓塞栓性肺高血圧症の危険因子であり, 10~20%に見られる. 我々の検討では, APSを合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈内膜摘除術は, 術後死亡率に差を認めないが出血性合併症が多いことが明らかとなった. APSにおいて, 3抗体(ループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピン抗体, β2グリコプロテインI抗体)すべて陽性例は血栓症発生の危険性が高いとされる. そこで今回3抗体陽性APS合併慢性血栓塞栓性肺高血圧症4例の手術成績を検討した. 「結果」: 4...
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Published in | Shinzo Vol. 47; no. 7; p. 864 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2015
日本心臓財団・日本循環器学会 Japan Heart Foundation |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.47.864 |
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Summary: | 「背景と目的」: 抗リン脂質抗体症候群(APS)は反復する動静脈血栓症や習慣性流産をきたす自己免疫疾患である. 本疾患は慢性血栓塞栓性肺高血圧症の危険因子であり, 10~20%に見られる. 我々の検討では, APSを合併した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈内膜摘除術は, 術後死亡率に差を認めないが出血性合併症が多いことが明らかとなった. APSにおいて, 3抗体(ループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピン抗体, β2グリコプロテインI抗体)すべて陽性例は血栓症発生の危険性が高いとされる. そこで今回3抗体陽性APS合併慢性血栓塞栓性肺高血圧症4例の手術成績を検討した. 「結果」: 4例ともPT値(20.1~25.3s)と比較しAPTT値(54.8~97.6s)が延長しており, 術前右心カテーテル前後で血小板減少を認めた. 3例で急性肺塞栓症の既往があり, うち1例は急性増悪のため緊急手術となった. 術後, 肺出血を1例に認め, 1例でペースメーカーリードに血栓が付着していたのでリード抜去したが, 術後残存三尖弁閉鎖不全症による右心不全となりECMOを必要とした. また, 出血による心タンポナーデを合併した. 3例で血小板輸血にもかかわらず血小板数の著明な減少を認めた. 4例とも血栓性合併症は認めず生存退院し, 遠隔期において血栓性および出血性合併症を認めなかった. 1例は残存三尖弁閉鎖不全症による右心不全を合併し三尖弁形成術を施行した. 「結語」: 3抗体陽性APSはAPTTの延長を認め, 手術により著明な血小板減少を認めた. 術後血栓性合併症を認めなかったが出血性合併症を認めており, 抗凝固療法には注意が必要である. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.47.864 |