濾胞性リンパ腫におけるユビキチンリガーゼSkp2の発現に関する免疫組織化学的検討

濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は,「胚中心を構成するB細胞,すなわち中型のcentrocyteと大型のcentroblastを正常対応細胞とする腫瘍で,通常は明瞭な腫瘍性胚中心様構造が1個以上存在するもの」と定義されている.FLでは腫瘍細胞中のcentroblastの割合によりGradingが行われ,Gradeによって生命予後や再発率に差が出ることが示されている.細胞周期の進行は,ユビキチン–プロテアソーム経路による厳密なタンパク質分解により調節されており,ユビキチンリガーゼの一種であるS-phase kinase-associated protein 2(Sk...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 72; no. 5; pp. 567 - 573
Main Authors 石原, 里美, 佐々木, 陽介, 塩沢, 英輔, 瀧本, 雅文, 本間, まゆみ, 野呂瀬, 朋子, 矢持, 淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2012
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma.72.567

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Summary:濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は,「胚中心を構成するB細胞,すなわち中型のcentrocyteと大型のcentroblastを正常対応細胞とする腫瘍で,通常は明瞭な腫瘍性胚中心様構造が1個以上存在するもの」と定義されている.FLでは腫瘍細胞中のcentroblastの割合によりGradingが行われ,Gradeによって生命予後や再発率に差が出ることが示されている.細胞周期の進行は,ユビキチン–プロテアソーム経路による厳密なタンパク質分解により調節されており,ユビキチンリガーゼの一種であるS-phase kinase-associated protein 2(Skp2)の過剰発現は細胞周期回転を促進し,腫瘍の発生や増殖速度と関連があるとされている.今回われわれは,FLにおける細胞周期関連タンパク質の発現およびGradeとの関連を免疫組織化学的に検討した.対象は昭和大学病院でFLと診断された70症例で,Grade 1は15例,Grade 2は30例,Grade 3Aは20例,Grade 3Bは5例であった.70例のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を用いて,Skp2,p27,Ki-67の免疫組織化学的染色を行った.Skp2,p27,Ki-67それぞれについて,陽性率の最も高い部分をhot spotとし,hot spot内の腫瘍細胞500個中の陽性細胞数の割合を算出し,FLにおける細胞周期関連タンパク質の発現およびGradeとの関連を検討した.Skp2とp27,およびp27とKi-67の発現にはそれぞれ負の相関を認めた.Skp2とKi-67の発現には正の相関を認めた.Grade別の検討では,Gradeがあがるにしたがい,Skp2,Ki-67の発現率は有意に増加し,p27の発現率は有意に減少していた.FLの細胞増殖性の指標としてSkp2,p27,Ki-67の免疫組織化学的染色は有用な手段と考えられた.また,Skp2もKi-67と同様に細胞増殖マーカーのひとつとなり,Skp2の高発現はFLの悪性度の指標となり得る可能性が示唆された.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma.72.567