Diffuse large B-cell lymphomaにおける細胞周期関連タンパク質発現の免疫組織化学的検討

Diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)は,悪性リンパ腫において最も多い組織亜型で,臨床的および腫瘍生物学的にきわめて多彩な腫瘍であり,さまざまな予後因子や予後予測モデルが提唱されている.DLBCLは,通常Ki-67陽性率が40%以上と高く,高悪性度リンパ腫とされている.Ki-67は細胞増殖マーカーのひとつで,多くの腫瘍において悪性度や予後とよく相関することが知られている.細胞周期の進行は,ユビキチン―プロテアソーム経路によるタンパク質分解により調節されている.Skp2は主にp27などの細胞周期の抑制分子を標的としてユビキチン化を行うタンパク質で,Skp2の過剰...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 72; no. 1; pp. 108 - 117
Main Authors 太田, 秀一, 塩沢, 英輔, 瀧本, 雅文, 梅村, 宜弘, 本間, まゆみ, 矢持, 淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.02.2012
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma.72.108

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Summary:Diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)は,悪性リンパ腫において最も多い組織亜型で,臨床的および腫瘍生物学的にきわめて多彩な腫瘍であり,さまざまな予後因子や予後予測モデルが提唱されている.DLBCLは,通常Ki-67陽性率が40%以上と高く,高悪性度リンパ腫とされている.Ki-67は細胞増殖マーカーのひとつで,多くの腫瘍において悪性度や予後とよく相関することが知られている.細胞周期の進行は,ユビキチン―プロテアソーム経路によるタンパク質分解により調節されている.Skp2は主にp27などの細胞周期の抑制分子を標的としてユビキチン化を行うタンパク質で,Skp2の過剰発現は細胞周期回転を促進し,腫瘍の発生や増殖速度と関連があるとされている.今回われわれは,DLBCLにおける細胞周期関連タンパク質の発現を免疫組織化学的に検討し,subtypeとの関連や臨床病理学的特徴を解析した.対象は,昭和大学病院で診断されたDLBCL 33例で,男性17例,女性16例,年齢は47歳~93歳で,年齢中央値は76歳であった.33例をCD10,MUM1,Bcl-6の免疫組織化学的染色を用いたアルゴリズムにより,germinal centre B-cell like(GCB)typeとnon-germinal centre B-cell like(non-GCB)typeに亜分類した.また,Skp2,p27,Ki-67の免疫組織化学的染色を行い,それぞれ低倍率視野で陽性率の最も高い部分を求め,高倍率(対物40倍)で3回カウントし,1視野同一面積あたりの腫瘍細胞全体における陽性細胞数の割合を算出した.DLBCL 33例において,Skp2高発現(50%以上)例は10/33例(30%),p27低発現(50%未満)例は13/33例(39%),Ki-67高発現(60%以上)例は15/33例(45%)であり,Skp2高発現例ではKi-67の発現が有意に高かった.p27とKi-67およびSkp2とp27の発現については統計学的関連は認められなかった.33例を亜分類した結果,GCB typeは13例(39%),non-GCB typeは20例(61%)であった.GCB type 13例においては,Skp2,p27,Ki-67の発現に,統計学的関連は認められなかった.Non-GCB type 20例においては,Skp2高発現例でKi-67の発現が高い傾向があった.p27とKi-67およびSkp2とp27の発現については統計学的関連は認められなかった.GCB typeとnon-GCB typeのsubtype間の比較では,non-GCB typeに高齢患者が多い傾向がみられた.Skp2,p27,Ki-67の発現についてはいずれも統計学的有意差は認められなかった.DLBCLにおいて,Skp2高発現群ではKi-67の発現が有意に高く,DLBCLの腫瘍細胞における細胞周期の進行にSkp2が関与していることが示唆された.Skp2の高発現は細胞増殖周期の亢進状態を反映していると考えられ,DLBCLの増殖性と悪性度を考えるうえで有用な指標のひとつになると考えられた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma.72.108