急性横断性脊髄炎に対し早期リハビリ介入し歩行獲得に至った1例

【はじめに、目的】 急性横断性脊髄炎による、弛緩性麻痺を呈した小児に対して、装具作成を実施し歩行獲得に至った報告が少ない。今回は、早期から長下肢装具を使用した立位練習を実施し、短下肢装具 (以下、AFO)を作成し歩行獲得となった症例を経験したため、 三次元動作解析装置KinemaTracerを用いた歩行解析結果と共に報告する。 【症例報告】 5歳女児。発症前の発達は正常発達であり、入院前のADLは自立していた。腰痛を訴えてから歩行障害を呈し、MRIにて胸髄に横断性脊髄炎所見があり、両下肢弛緩性麻痺、膀胱直腸障害を認め、急性横断性脊髄炎の診断で入院となった。 【経過・結果】 第4病日から理学療法...

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Published inThe Japanese Journal of Pediatric Physical Therapy Vol. 2; no. Supplement_1; p. 93
Main Authors 稲森, 遥, 日高, 雅大, 小森, 華穂, 平野, 哲, 中野, 有子, 大高, 洋平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of Pediatric Physical Therapy
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ISSN2758-6456
DOI10.60187/jjppt.2.Supplement_1_93

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Summary:【はじめに、目的】 急性横断性脊髄炎による、弛緩性麻痺を呈した小児に対して、装具作成を実施し歩行獲得に至った報告が少ない。今回は、早期から長下肢装具を使用した立位練習を実施し、短下肢装具 (以下、AFO)を作成し歩行獲得となった症例を経験したため、 三次元動作解析装置KinemaTracerを用いた歩行解析結果と共に報告する。 【症例報告】 5歳女児。発症前の発達は正常発達であり、入院前のADLは自立していた。腰痛を訴えてから歩行障害を呈し、MRIにて胸髄に横断性脊髄炎所見があり、両下肢弛緩性麻痺、膀胱直腸障害を認め、急性横断性脊髄炎の診断で入院となった。 【経過・結果】 第4病日から理学療法と作業療法を開始した。開始時の身体機能は、ASIA Impairment Scale (以下、AIS)はA、Neurological Level of Injury (以下、NLI)はTh9、ASIAの下肢運動スコア (以 下、LEMS)はRt/Lt=0/0であった。また、起居動作、座位保持、車椅子移乗は全介助であり、機能的自立度評価法 (WeeFIM :Functional Independence Measure for Children)の運動項目は 33/91点であった。 第9病日、骨盤帯付き長下肢装具 (HKAFO)や内側股継手付き長下肢装具 (Primewalk)を使用し立位・歩行練習を開始した。第 45病日より、徐々に左右AFOを使用した立位・歩行練習を組み入れるようにし、第68病日にPCW(Posture Control Walker)と左右AFOを使用し歩行は近位監視レベルとなった。 第91病日、AISはC、NLIはTh9、LEMSは7/7となり、筋緊張はハムストリングス、下腿三頭筋、内転筋群がMAS1と下肢痙縮を認め、WeeFIMの運動項目は77/91点ととなった。歩行は、キャスター付き4輪歩行器と左右AFOを使用し修正自立にて可能となった。また、同日三次元動作解析装置を使用し歩行計測を実施したところ、左右の膝関節屈曲位歩行、左右の内側ホイップ、左下肢優位のクリアランス不良を認めた。第117病日、両側ロフストランド杖と左右AFOで自宅退院となり、以降、更なる歩行改善・獲得に向け外来リハビリ継続となった。 【考察】 小児の横断性脊髄炎に対する症例報告は少なく、早期より、機能回復に応じた適切な課題難易度でリハビリ介入を行なったことが、順調な歩行獲得やADL向上に繋がったと考えられる。また、歩行分析において、主観的な評価で歩容の特徴を捉えることは可能であるが、三次元動作解析装置による客観的な評価を行うことで、より正確かつ定量的に評価をすること可能であった。歩行障害の要因を定量的に評価したことで、今後の理学療法介入に向けた問題点の抽出や患者との改善点の共有が可能となると考えられる。 【倫理的配慮】本人及び保護者には、ヘルシンキ宣言に基づき本発表の趣旨を口頭及び紙面にて説明し同意を得た。
ISSN:2758-6456
DOI:10.60187/jjppt.2.Supplement_1_93