乳房弧虫症の1例

症例は51歳,女性.右乳房C域に腫瘤を触知し,マンモグラフィと超音波検査で同部位に管状陰影を認めたが,穿刺吸引細胞診にて確定診断が得られず,経過観察とした.1年後,腫瘤は右乳房A域に移動していた.針生検にて寄生虫疾患を疑い,外科的切除を実施,Spirometra属裂頭条虫のプレロセルコイドを確認して乳房弧虫症と確定診断した.初回切除から3年後,2回目切除から1年6カ月後に,同側乳房内に再発をきたした.再発の原因として,初診から外科的切除まで1年間を要し,その間にプレロセルコイドが遊走したことが推察された.乳房弧虫症の本邦報告は自験例を含めて17例と稀である.弧虫症では,時間経過とともにプレロセ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 11; pp. 1707 - 1713
Main Authors 吉村, 吾郎, 飯塚, 徳重, 伊達, 恵美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.1707

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Summary:症例は51歳,女性.右乳房C域に腫瘤を触知し,マンモグラフィと超音波検査で同部位に管状陰影を認めたが,穿刺吸引細胞診にて確定診断が得られず,経過観察とした.1年後,腫瘤は右乳房A域に移動していた.針生検にて寄生虫疾患を疑い,外科的切除を実施,Spirometra属裂頭条虫のプレロセルコイドを確認して乳房弧虫症と確定診断した.初回切除から3年後,2回目切除から1年6カ月後に,同側乳房内に再発をきたした.再発の原因として,初診から外科的切除まで1年間を要し,その間にプレロセルコイドが遊走したことが推察された.乳房弧虫症の本邦報告は自験例を含めて17例と稀である.弧虫症では,時間経過とともにプレロセルコイドの遊走をきたし,虫体の完全切除が困難となる可能性があるため,画像診断で弧虫症を疑った場合は,直ちに外科的切除を考慮すべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.1707