CUBICを用いた全身三次元病理解析

「はじめに」 電極の位置情報と電位情報を三次元イメージとして再構築し, 心臓の電気的興奮伝搬様式を可視化する三次元マッピングシステムが不整脈研究や診断・治療に活用されているように, 臓器全体の立体イメージをとらえることは基礎・臨床の双方で重要なテーマの一つとなっている. CUBICは, 透明化した臓器内の遺伝学的に組み込んだ蛍光タンパク質や, 特定の組織(核など)の免疫染色を三次元観察することで, 一細胞解像度での三次元病理解析を可能とした技術である. 透明化を進める際に最初の障壁となるのは光の反射である. 光の反射は空気とガラスの境界面のように, 屈折率の変化する場所で起こるが, 生物の体は...

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Published inShinzo Vol. 47; no. 2; pp. 285 - 291
Main Authors 田井中, 一貴, 上田, 泰己, 須山, 孟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2015
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.47.285

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Summary:「はじめに」 電極の位置情報と電位情報を三次元イメージとして再構築し, 心臓の電気的興奮伝搬様式を可視化する三次元マッピングシステムが不整脈研究や診断・治療に活用されているように, 臓器全体の立体イメージをとらえることは基礎・臨床の双方で重要なテーマの一つとなっている. CUBICは, 透明化した臓器内の遺伝学的に組み込んだ蛍光タンパク質や, 特定の組織(核など)の免疫染色を三次元観察することで, 一細胞解像度での三次元病理解析を可能とした技術である. 透明化を進める際に最初の障壁となるのは光の反射である. 光の反射は空気とガラスの境界面のように, 屈折率の変化する場所で起こるが, 生物の体は屈折率の異なった物質や, 光吸収性の高い物質(色素など)から構成されているため, 反射や散乱が至る所で起こり, ほとんどすべての動物は透明ではない. 組織内の屈折率が均一になるように工夫することこれまでさまざまな組織透明化試薬(BABB, THF-DBE, Scale, SeeDB, ClearT)やそれらを利用した透明化プロトコール(3DISCO, CLARITY, PACT-PARS)が開発されてきたが, それらは主に色素の少ない脳のために最適化(屈折率の調整が重視)されており, それゆえ, 透明化における組織脱色の重要性が考慮されていなかった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.285