肝細胞癌薬物療法の最新の進歩

2007年に分子標的薬ソラフェニブがSHARP試験とAsia Pacific試験において肝細胞癌に対する予後延長効果が示されて以来,肝細胞癌の薬物療法は大きく変化した.遠隔転移,脈管浸潤に対する治療選択肢が増え,進行性肝癌でもある程度長期生存が得られるようになったが,ソラフェニブは腫瘍縮小効果が乏しいことや手足症候群などの比較的強い副作用から,ソラフェニブに代わる新規分子標的薬やソラフェニブ治療で病勢が進行した後の2次治療薬の開発が望まれてきた.ただし2007~2016年までの10年間,多数の薬剤の開発が試みられたものの,その全ての臨床試験がことごとく失敗に終わった.しかしながら,2017年と...

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Published in肝臓 Vol. 59; no. 11; pp. 587 - 603
Main Author 工藤, 正俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 20.11.2018
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.59.587

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Summary:2007年に分子標的薬ソラフェニブがSHARP試験とAsia Pacific試験において肝細胞癌に対する予後延長効果が示されて以来,肝細胞癌の薬物療法は大きく変化した.遠隔転移,脈管浸潤に対する治療選択肢が増え,進行性肝癌でもある程度長期生存が得られるようになったが,ソラフェニブは腫瘍縮小効果が乏しいことや手足症候群などの比較的強い副作用から,ソラフェニブに代わる新規分子標的薬やソラフェニブ治療で病勢が進行した後の2次治療薬の開発が望まれてきた.ただし2007~2016年までの10年間,多数の薬剤の開発が試みられたものの,その全ての臨床試験がことごとく失敗に終わった.しかしながら,2017年と2018年の2年間で立て続けに4剤(レゴラフェニブ,レンバチニブ,カボザンチニブ,ラムシルマブ)が臨床試験に成功し,臨床現場で使用可能となりつつある.また免疫チェックポイント阻害剤の治験や免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬との併用の治験も進行中であり肝細胞癌の薬物治療は今後も大きく変化し肝細胞癌治療のパラダイムシフトが起こりつつある.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.59.587