B-15. 大規模震災後のDVTに対するアスピリン治療は避けるべきである
新潟県中越地震では車中泊避難が約5万人でなされ肺塞栓症で死亡者も出た. 我々は震災後8日後から被災地で下肢静脈エコー検査を行った. 当時被災地では停電や倒壊で病院機能がマヒしており血液検査ができない状況だったことからDVTの治療としてアスピリンを投与することにしていた. 避難所巡回診療のエコー検査で車中泊していた被災者2人の下腿深部静脈に広範囲の血栓を認めアスピリンを投与した. ところが7日後の巡回診療で再検したところ2人とも下肢腫脹の悪化を訴えエコーでもDVTの悪化を認めた. そこで病院紹介し抗凝固療法が開始され1カ月後のエコー検査ではDVTは改善していた. 大規模震災後では病院が機能せずワ...
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Published in | Shinzo Vol. 47; no. 7; p. 930 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2015
日本心臓財団・日本循環器学会 Japan Heart Foundation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.47.930 |
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Summary: | 新潟県中越地震では車中泊避難が約5万人でなされ肺塞栓症で死亡者も出た. 我々は震災後8日後から被災地で下肢静脈エコー検査を行った. 当時被災地では停電や倒壊で病院機能がマヒしており血液検査ができない状況だったことからDVTの治療としてアスピリンを投与することにしていた. 避難所巡回診療のエコー検査で車中泊していた被災者2人の下腿深部静脈に広範囲の血栓を認めアスピリンを投与した. ところが7日後の巡回診療で再検したところ2人とも下肢腫脹の悪化を訴えエコーでもDVTの悪化を認めた. そこで病院紹介し抗凝固療法が開始され1カ月後のエコー検査ではDVTは改善していた. 大規模震災後では病院が機能せずワルファリンによる抗凝固療法は難しいかもしれないが, 最近は小型の携帯型POCT装置も開発されPT-INRが全血で検査できるようになっている. またワルファリン投与初期の易血栓性についてはフォンダパリヌクスの皮下注射ができることから震災後でも可能である. 一方, 日本人においてもアスピリン抵抗性が少なくないこと, 震災後のストレスが大きい状況においてはアスピリンによる胃十二指腸粘膜障害の影響が大きい可能性あることなどから震災後のDVT治療においてアスピリン使用は避けるべきであると考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.47.930 |