S状結腸憩室穿通による腸間膜膿瘍形成の1例

症例は42歳,男性。急激に発症した下腹部痛を主訴に当院を受診した。38℃台の発熱と左下腹部に軽度の圧痛を認めた。血液検査で炎症反応の上昇があり,腹部CT検査でS状結腸腸間膜にair density,および周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。S状結腸憩室の腸間膜穿通と診断したが,腹部症状が軽度であったため,絶食と抗生剤による保存的加療を開始した。徐々に炎症所見は改善していたが,第4病日に再び38℃台の発熱と,腹部CT検査で膿瘍の拡大を認めたため,緊急手術を行った。開腹するとS状結腸間膜内に柔らかい膿瘍を触知したが,腹水の汚染は認めず,膿瘍を穿破することなくS状結腸切除術を施行した。摘出標本で結腸憩室の...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 38; no. 1; pp. 137 - 141
Main Authors 山下, 巌, 真鍋, 高宏, 神山, 公希, 加藤, 奈月, 山口, 哲司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2018
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.137

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Summary:症例は42歳,男性。急激に発症した下腹部痛を主訴に当院を受診した。38℃台の発熱と左下腹部に軽度の圧痛を認めた。血液検査で炎症反応の上昇があり,腹部CT検査でS状結腸腸間膜にair density,および周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。S状結腸憩室の腸間膜穿通と診断したが,腹部症状が軽度であったため,絶食と抗生剤による保存的加療を開始した。徐々に炎症所見は改善していたが,第4病日に再び38℃台の発熱と,腹部CT検査で膿瘍の拡大を認めたため,緊急手術を行った。開腹するとS状結腸間膜内に柔らかい膿瘍を触知したが,腹水の汚染は認めず,膿瘍を穿破することなくS状結腸切除術を施行した。摘出標本で結腸憩室の腸間膜穿通が確認された。合併症なく経過し,術後12日目に退院した。結腸憩室穿通による腸間膜膿瘍形成は比較的まれな疾患であるが,炎症が限局するため,早期に適切な治療を行えば予後良好と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.137