大型食道裂孔ヘルニアに伴うCameron lesionの1例

症例は67歳,女性.黒色便と重度の鉄欠乏性貧血を主訴に,近医を受診した.出血源の検索のため,上下部の内視鏡検査が行われた.大型食道裂孔ヘルニア(LHH)と診断されたが,出血源不明のまま40カ月間保存的治療による経過観察が続けられていた.この間,2回の大量消化管出血と進行する鉄欠乏性貧血が観察された.また,この間に再度の上下部内視鏡検査が行われていた.近医初診後40カ月目に,LHHによるupside down stomachのため当院外科へ緊急入院した.過去の上部内視鏡写真の見直しにより,Cameron lesion(CL)からの消化管出血が疑われ,LHHに対する手術を行った.術後は順調に経過し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 6; pp. 1047 - 1051
Main Authors 土佐, 明誠, 安次富, 駿介, 中嶋, 啓雄, 坂井, 昇道, 柴田, 信博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.83.1047

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Summary:症例は67歳,女性.黒色便と重度の鉄欠乏性貧血を主訴に,近医を受診した.出血源の検索のため,上下部の内視鏡検査が行われた.大型食道裂孔ヘルニア(LHH)と診断されたが,出血源不明のまま40カ月間保存的治療による経過観察が続けられていた.この間,2回の大量消化管出血と進行する鉄欠乏性貧血が観察された.また,この間に再度の上下部内視鏡検査が行われていた.近医初診後40カ月目に,LHHによるupside down stomachのため当院外科へ緊急入院した.過去の上部内視鏡写真の見直しにより,Cameron lesion(CL)からの消化管出血が疑われ,LHHに対する手術を行った.術後は順調に経過し,術後60カ月経つ現在,消化管出血,進行する鉄欠乏性貧血,裂孔ヘルニアの再発はない.LHHに発生する胃粘膜の非特異的な糜爛や潰瘍性の病変は,CLと呼ばれ,急性消化管出血や慢性の鉄欠乏性貧血の原因となる.すべてのLHH患者では,消化管出血や貧血があれば,CLを疑うべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.1047