トモシンセシス法を用いたパノラマX線画像における歯周組織所見の主観的および物理学的画質評価
目的 : 口内法X線撮影は鮮明な画像を得られる一方で, 全顎撮影では検査時間が長く, 患者の不快感および唾液による交叉感染のリスクもある. 本研究では, パノラマX線撮影の断層域の形状や位置を変化させて画像を再構成できるトモシンセシス法に着目し, 歯科診断における同手法の有用性を検討した. 材料と方法 : 歯科用頭部ファントムを用いてパノラマおよび全顎口内法X線撮影を行った. パノラマX線撮影は標準位置と前後 (±10mm, ±20mm) に変位させた計5つの位置づけで撮影し, それぞれをトモシンセシス法で補正した. 標準位置で撮影したパノラマX線画像を基準として, 変位させたパノラマX線画像...
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| Published in | 日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 5; pp. 396 - 404 |
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| Main Authors | , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
2020
日本歯科保存学会 |
| Subjects | |
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| ISSN | 0387-2343 2188-0808 |
| DOI | 10.11471/shikahozon.63.396 |
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| Summary: | 目的 : 口内法X線撮影は鮮明な画像を得られる一方で, 全顎撮影では検査時間が長く, 患者の不快感および唾液による交叉感染のリスクもある. 本研究では, パノラマX線撮影の断層域の形状や位置を変化させて画像を再構成できるトモシンセシス法に着目し, 歯科診断における同手法の有用性を検討した. 材料と方法 : 歯科用頭部ファントムを用いてパノラマおよび全顎口内法X線撮影を行った. パノラマX線撮影は標準位置と前後 (±10mm, ±20mm) に変位させた計5つの位置づけで撮影し, それぞれをトモシンセシス法で補正した. 標準位置で撮影したパノラマX線画像を基準として, 変位させたパノラマX線画像, トモシンセシス法で補正した画像および口内法X線画像の各3種類の画像における主観評価を20名の歯科医師が行った. 評価対象は上顎前歯部, 上顎左側臼歯部とし, おのおのの歯槽頂線の連続性, セメント-エナメル境の視認性, 歯根膜腔の判別, 根尖部付近の歯髄腔形態, 歯槽硬線の判別とした. 画像は0~4点で評価した (4 : かなり鮮明, 3 : 鮮明, 2 : 視認可, 1 : 一部不可, 0 : 全く視認不可). また, 客観評価として各位置づけ画像と補正画像に対しModulation Transfer Function (MTF) を解析した. 成績 : 前方10mm変位撮影した画像では前歯部において, 前方20mm変位撮影では前歯部と臼歯部において補正画像の主観評価が有意に高かった (p<0.001). 補正画像と口内法画像の間に有意な差はなかった. 一方, 後方10mm変位では前歯部において, 後方20mm変位では前歯部と臼歯の一部項目において補正画像の主観評価が有意に高かった (p<0.001). 補正画像と口内法X線画像の比較では後方10mm, 20mm変位とも根尖部付近の歯髄腔形態を除いたすべての項目において口内法X線画像のほうが有意に高評価であった (p<0.001). MTF解析では後方10mm前歯部において, 補正により有意な鮮鋭度の改善を示した (p<0.0001). 結論 : 前後に変位した位置で撮影し半影が大きな画像でも, トモシンセシス法補正により前歯部は有意に主観的診断レベルが改善した. とりわけ, 前方に大きく変位して撮影した場合は前歯部・臼歯部ともに改善が顕著であり, 口内法X線画像に劣らない良質な画像が得られることが示唆された. |
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| ISSN: | 0387-2343 2188-0808 |
| DOI: | 10.11471/shikahozon.63.396 |