腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った鼠径ヘルニア偽還納の1例

症例は60歳,男性.右鼠径部の膨隆と疼痛で当院に紹介された.CTで右鼠径ヘルニア嵌頓と,その口側腸管の拡張を認めた.用手還納し,膨隆,疼痛は消失したが,経過観察のため入院となった.嘔気と嘔吐が出現し第4病日にCTを実施し,右鼠径部の腹膜前腔に絞扼腸管を認めた.鼠径ヘルニア偽還納と診断し,イレウス管による減圧を行った後,TAPPを施行した.手術所見で肥厚腹膜に絞扼された小腸を認めた.肥厚腹膜を切開し嵌頓腸管を整復し,腸管壊死を認めず,メッシュを用いヘルニアを修復した.偽還納はヘルニア嚢が絞扼された腸管とともに腹膜前腔に戻る稀な病態である.前方到達法では観察が困難だが,TAPPでは容易に確認でき有...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 6; pp. 1248 - 1252
Main Authors 鳥居, 隼, 並木, 完憲, 戸崎, 達, 笹本, 彰紀, 岩本, 久幸, 山田, 典和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.1248

Cover

More Information
Summary:症例は60歳,男性.右鼠径部の膨隆と疼痛で当院に紹介された.CTで右鼠径ヘルニア嵌頓と,その口側腸管の拡張を認めた.用手還納し,膨隆,疼痛は消失したが,経過観察のため入院となった.嘔気と嘔吐が出現し第4病日にCTを実施し,右鼠径部の腹膜前腔に絞扼腸管を認めた.鼠径ヘルニア偽還納と診断し,イレウス管による減圧を行った後,TAPPを施行した.手術所見で肥厚腹膜に絞扼された小腸を認めた.肥厚腹膜を切開し嵌頓腸管を整復し,腸管壊死を認めず,メッシュを用いヘルニアを修復した.偽還納はヘルニア嚢が絞扼された腸管とともに腹膜前腔に戻る稀な病態である.前方到達法では観察が困難だが,TAPPでは容易に確認でき有用な術式であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.1248