心臓リハビリテーションの普及を願って
心大血管疾患に対する心臓リハビリテーションは, 標準的な治療の一つとしてその有効性がすべての患者に提供すべきであるとの考えが広まっている. しかし, 整形外科や脳卒中に比べて, 心リハの日常臨床への浸透率は依然として低いと言わざるを得ない. 国内の医療費の多くが循環器疾患に費やされているにもかかわらず, 心大血管疾患に対するリハビリテーション料の算定割合は極めて低い水準にとどまっている. 数年前に厚生労働省が公開したデータベースを通じて, 心大血管リハビリテーションの普及状況を調査してみたところ, 心大血管リハビリテーションはリハビリテーション全体の実施回数のわずか2%しか占めていなかった....
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| Published in | Shinzo Vol. 56; no. 2; p. 83 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.02.2024
日本心臓財団・日本循環器学会 Japan Heart Foundation |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
| DOI | 10.11281/shinzo.56.83 |
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| Summary: | 心大血管疾患に対する心臓リハビリテーションは, 標準的な治療の一つとしてその有効性がすべての患者に提供すべきであるとの考えが広まっている. しかし, 整形外科や脳卒中に比べて, 心リハの日常臨床への浸透率は依然として低いと言わざるを得ない. 国内の医療費の多くが循環器疾患に費やされているにもかかわらず, 心大血管疾患に対するリハビリテーション料の算定割合は極めて低い水準にとどまっている. 数年前に厚生労働省が公開したデータベースを通じて, 心大血管リハビリテーションの普及状況を調査してみたところ, 心大血管リハビリテーションはリハビリテーション全体の実施回数のわずか2%しか占めていなかった. この数字は, 死亡率や国民医療費が心大血管疾患に対して多くの割合が割かれていることとは対照的だ. 心臓リハビリテーションという言葉はよく耳にするようになったが, 心大血管リハビリテーションはまだまだ少数派の存在である. 心大血管リハビリテーションを普及させていく上では, その専門家の育成が課題である. この点については, 第二期循環器病対策基本計画においても強調されている. 私自身, 理学療法士の養成校の教員をしているが, 半分以上の学生は入学時にスポーツ選手に対する理学療法に興味を持って入学しており, 心大血管疾患のリハビリテーションについて知っている学生はほとんどいないのが現状である. しかし, その後, 1年生の概論講義やアーリーエクスポージャー, 第3学年の専門科目を履修した後には, 約半分の学生が心大血管を含む内部障害系の理学療法に興味を持ってゼミを選択してくれ, 卒後も循環器分野での臨床や研究に取り組んでいる. 卒前からの教育の重要性を実感している. 一方で, 社会における心大血管リハビリテーションの認知度も重要な課題である. 厚労省の研究班(班長: 後藤葉一)で行われた5716人を対象としたインターネット調査では, 脳卒中・骨折手術後のリハビリテーションを知っていると回答した一般成人は74%であったのに対し, 心臓リハビリテーションを知っている人はわずか7%であった. その後, 大規模調査は行われていないが, 急速に普及しているとは考えにくく, 普及啓発のための継続的な取り組みの必要性を感じている. |
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| ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
| DOI: | 10.11281/shinzo.56.83 |