歯科領域におけるウイルス性肝炎に関する動画に対するアンケート調査

目的:歯科診療において,歯科医療従事者は,患者の唾液や血液などの体液に曝露されることが多く,肝炎ウイルスからの感染予防として標準予防策の徹底は肝要である.しかしながら,肝炎ウイルスに関する知識や標準予防策が十分でないと,肝炎患者の診療に影響をもたらす可能性がある.われわれは,肝炎ウイルスや標準予防策に対する教育,および肝炎患者への配慮に関する啓発を目的とした歯科医療従事者向けの動画を作成し,本動画の有用性を検証するためのアンケート調査を実施し,解析した. 材料と方法:「歯科医療従事者に知ってほしいB型肝炎,C型肝炎のこと」という約20分の動画を作成して,歯科医師に視聴してもらった後に,内容に関...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 67; no. 5; pp. 276 - 287
Main Authors 舞田, 健夫, 河野, 豊, 湯本, 浩通, 安彦, 善裕, 青田, 桂子, 四柳, 宏, 植原, 治, 高山, 哲治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 31.10.2024
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.67.276

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Summary:目的:歯科診療において,歯科医療従事者は,患者の唾液や血液などの体液に曝露されることが多く,肝炎ウイルスからの感染予防として標準予防策の徹底は肝要である.しかしながら,肝炎ウイルスに関する知識や標準予防策が十分でないと,肝炎患者の診療に影響をもたらす可能性がある.われわれは,肝炎ウイルスや標準予防策に対する教育,および肝炎患者への配慮に関する啓発を目的とした歯科医療従事者向けの動画を作成し,本動画の有用性を検証するためのアンケート調査を実施し,解析した. 材料と方法:「歯科医療従事者に知ってほしいB型肝炎,C型肝炎のこと」という約20分の動画を作成して,歯科医師に視聴してもらった後に,内容に関するアンケート調査を行った. 成績:アンケート調査に同意が得られた計343名の歯科医師のアンケート調査を解析した結果,動画の構成についてはおおむね良好な意見が多かった.「B型肝炎ワクチンの定期接種」「B型肝炎ウイルスの体外の感染可能持続期間」「肝炎検査の助成」「HCV抗体が中和抗体でないこと」を知っていた歯科医師は半数以下であった.若い歯科医師で「C型肝炎が近年治癒できる」ことを知らない割合が多かった.体液が環境面に付着した際の消毒薬は,次亜塩素酸ナトリウム,アルコール,クロルヘキシジンの順に回答していたが,若い歯科医師でアルコールを消毒薬として使用する割合が多かった.約45%の開業医(クリニック)は針刺しなどの刺傷時に対応できる内科への連携ができておらず,その理由として「連携方法が分からない」「近くに連携先がない」が大半であった.肝炎医療コーディネーターについては,7割近くの歯科医師(コメディカル含む)が資格取得を検討していたが,取得の必要性を感じない年配の歯科医師の割合も多かった. 結論:本動画のアンケート調査結果から,肝炎ウイルスや標準予防策に関する継続的な学習の必要性が確認された.今後は,肝炎患者に対する安全な歯科治療と配慮を担えるような問診のあり方などをさらに改善して完成させる予定である.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.67.276