腹部触手施術前後における施術者,受術者の連続的身体変化
あん摩・マッサージ・指圧施術者は日々の施術経過を通じ,手掌を中心とした自身の身体的変化,受術者の経時的応答変化を実感しているが,その実感・効果を裏付けるエビデンスは少ない.また,多くの先行研究は,受術者に焦点を当て,施術者と受術者の相互作用を考慮していない.そこで,本研究では施術者と受術者の身体的変化を同時に経時的測定を行い,両者の相互関係・作用を明らかにすることを目的とした. 本方法は,男女各1名の施術者,それぞれ,各6名1組の受術者グループを組合せ,50分間の試験を6回行った.試験は,施術前30分の安静,施術10分,施術後10分の安静を割り当てた.触手施術部位は,経験的に反応性が高いと考え...
Saved in:
Published in | 日本補完代替医療学会誌 Vol. 16; no. 1; pp. 39 - 47 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本補完代替医療学会
31.03.2019
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1348-7922 1348-7930 |
DOI | 10.1625/jcam.16.39 |
Cover
Summary: | あん摩・マッサージ・指圧施術者は日々の施術経過を通じ,手掌を中心とした自身の身体的変化,受術者の経時的応答変化を実感しているが,その実感・効果を裏付けるエビデンスは少ない.また,多くの先行研究は,受術者に焦点を当て,施術者と受術者の相互作用を考慮していない.そこで,本研究では施術者と受術者の身体的変化を同時に経時的測定を行い,両者の相互関係・作用を明らかにすることを目的とした. 本方法は,男女各1名の施術者,それぞれ,各6名1組の受術者グループを組合せ,50分間の試験を6回行った.試験は,施術前30分の安静,施術10分,施術後10分の安静を割り当てた.触手施術部位は,経験的に反応性が高いと考えられる受術者の腹部を選定した.受術者はベッド上仰臥位に,施術者はベッド横に設置した椅子に配置した.施術者と受術者両者の心電図測定と4か所(人迎,神門,陰交,太衝)の体表温度測定を同時・連続的に行った. 腹部触手施術により,(1)施術者のR-R間隔は短縮し(交感神経亢進),(2)受術者のR-R間隔は延長し(副交感神経亢進),(3)施術者の人迎・神門・陰交部の体表温度が上昇し,(4)受術者の陰交・太衝部の体表温度が上昇した.また,一方の施術者は,受術者の副交感神経活性化力は少ないが,受術者の腹部・足背の温度を顕著に上昇させた.他方の施術者は受術者の副交感神経活性化力は大きいが,受術者の腹部・足背の温度上昇は少なかった. すなわち,腹部触手施術により,R-R間隔に関しては,施術者と受術者は反対の変化を示した.体表温度変化に関しては,施術者は腹部を含む上半身の人迎・神門・陰交部,受術者は腹部を含む下半身の陰交・太衝部の温度が上昇した.さらに,本試験において,二人の施術者は全体的に同様の施術効果・傾向を示したが,各施術者の特長や受術者への施術効果の違いを認めた. 本研究では,触手施術により,施術者と受術者にどのような変化が起きるのか,両者の関係・変化を同時・連続的に計測し,その動的な相互関係を追跡した.その結果,施術者と受術者の身体的変化は迅速であり,両者は互いに影響していることを明らかにした. |
---|---|
ISSN: | 1348-7922 1348-7930 |
DOI: | 10.1625/jcam.16.39 |