Porphyromonas gingivalis由来LPS局所投与が加齢マウスの歯周組織に及ぼす影響

目的 : 歯周炎は慢性炎症による歯槽骨吸収を主な症状としている. 従来の歯周炎マウスモデルは, 炎症を惹起させる方法や観察期間において, 慢性炎症のマウスモデルとして改善の余地があると考えられる. さらに実験的歯周炎マウスでは誘発直後に歯周ポケットの形成や骨吸収を認めるものの, その後治癒傾向に転じ, 炎症が慢性経過しないという問題を提起している報告もある. 今回の研究では, 機械的刺激の少ない方法を用いて歯槽骨吸収を惹起させ, 若齢および加齢マウスにおける歯周炎の進行を比較した. 材料と方法 : Porphyromonas gingivalis由来のLPSを8週齢と24週齢のC57BL/6J...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 63; no. 4; pp. 287 - 295
Main Authors 長谷川, 徹, 佐藤, 匠, 辰巳, 順一, 森永, 啓嗣, 北後, 光信, 安田, 忠司, 清水, 雄太, 金山, 圭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2020
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.63.287

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Summary:目的 : 歯周炎は慢性炎症による歯槽骨吸収を主な症状としている. 従来の歯周炎マウスモデルは, 炎症を惹起させる方法や観察期間において, 慢性炎症のマウスモデルとして改善の余地があると考えられる. さらに実験的歯周炎マウスでは誘発直後に歯周ポケットの形成や骨吸収を認めるものの, その後治癒傾向に転じ, 炎症が慢性経過しないという問題を提起している報告もある. 今回の研究では, 機械的刺激の少ない方法を用いて歯槽骨吸収を惹起させ, 若齢および加齢マウスにおける歯周炎の進行を比較した. 材料と方法 : Porphyromonas gingivalis由来のLPSを8週齢と24週齢のC57BL/6Jマウスの口蓋側歯肉に1週間に2回, 合計12回投与した. LPSは33Gのハミルトンマイクロシリンジを用いて投与され, 1回当たりの投与量は20μgとした. マウスの上顎骨は, 最終投与の1週間後と4週間後に採取した. 上顎軟組織の口腔内画像, 上顎のマイクロCT画像, 上顎組織切片を作製し, 各種染色 (HE染色, TRAP染色) を行い歯周組織の形態を視覚的および組織学的に観察した. 成績 : 口腔内画像では, 肉眼的にマイクロシリンジによるLPSの投与で生じた軟組織の変化 (腫脹, 発赤, 退縮) は認められなかった. マイクロCT画像では, LPS群はSaline群と比較して骨吸収を多く認めた. YoungのLPS群に比べてOldのLPS群は, LPS投与終了1週から4週にかけて骨吸収が継続的に進行していた. HE染色では, OldのLPS群では1週から4週にかけては骨組織の吸収が進行し, OldのLPS群のなかでも特に4w群で多数の炎症性細胞の浸潤を認め, 上皮下結合組織内の炎症が継続していた. TRAP染色では, LPS群はSaline群と比較してTRAP陽性細胞を多く認めた. OldのLPS群は1週より4週でTRAP陽性細胞を多く認めた. 結論 : マイクロシリンジによる歯肉へのLPS投与は, マウス実験的歯周炎モデルとしての可能性が示唆された. 加齢マウスでは若齢マウスと比較して歯槽骨吸収の増加を認め, LPS投与後も継続的に骨吸収が進むことが示された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.63.287