廃用萎縮腸管に便とプレバイオティクス注入後に回腸人工肛門を閉鎖した1例

症例は62歳の女性で,直腸癌に対し腹腔鏡補助下括約筋間切除術を施行し,一時的回腸双孔式人工肛門を造設した.右肺転移出現のため肺部分切除術を優先し,直腸の術後1年で人工肛門閉鎖術を予定した.Colonoscopy(以下,CSと略記)を施行すると肛門側腸管の萎縮と発赤が著明で,CS後に38℃の発熱を認めた.萎縮腸管以外に原因は特定できず,CSによる腸管内圧上昇に伴うbacterial translocation(以下,BTと略記)を疑い手術を延期した.抗菌薬投与で解熱後,人工肛門の口側から排出される便にGFO®を加え肛門側から注入した.週2回,計16回定期的に注入し,BT発症から2カ月後のCSで粘...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 7; pp. 1363 - 1368
Main Authors 岡本, 耕一, 上野, 秀樹, 神藤, 英二, 神津, 慶多, 梶原, 由規, 畑中, 宏之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.1363

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Summary:症例は62歳の女性で,直腸癌に対し腹腔鏡補助下括約筋間切除術を施行し,一時的回腸双孔式人工肛門を造設した.右肺転移出現のため肺部分切除術を優先し,直腸の術後1年で人工肛門閉鎖術を予定した.Colonoscopy(以下,CSと略記)を施行すると肛門側腸管の萎縮と発赤が著明で,CS後に38℃の発熱を認めた.萎縮腸管以外に原因は特定できず,CSによる腸管内圧上昇に伴うbacterial translocation(以下,BTと略記)を疑い手術を延期した.抗菌薬投与で解熱後,人工肛門の口側から排出される便にGFO®を加え肛門側から注入した.週2回,計16回定期的に注入し,BT発症から2カ月後のCSで粘膜萎縮が改善,発熱もなかったため人工肛門閉鎖術を施行した.合併症なく術後7日目に退院した.廃用性萎縮腸管に自己便とプレバイオティクスを投与し,腸管粘膜機能の回復を図り人工肛門閉鎖術を施行しえた1例を経験した.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.1363