子宮内膜症の悪性転化も考えられる組織像を呈した後腹膜腫瘍の1例

子宮内膜症は全身の臓器に起こりうるが後腹膜腔は頻度が少なく,癌化はさらに稀である.症例は42歳の1経妊1経産婦で,月経時の右上腹部痛を主訴に受診し,腹部CTで後腹膜腫瘍を指摘された.MRIで上行結腸の外背側に,内部に液体成分と充実性成分を伴う10×9cm大の囊胞性腫瘤を認めた.CA19-9は2,120U/mL,CA125は116U/mLと上昇を認めた.後腹膜腫瘍摘出術を施行,腫瘍は他臓器への浸潤はなく摘出できた.病理所見では茶褐色液体を含む囊胞病変で,組織学的に婦人科癌に類似したadenocarcinomaの所見であり,総合的に子宮内膜症に関連した後腹膜悪性腫瘍と判断した.PET-CTで明らか...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 9; pp. 1534 - 1540
Main Authors 坪井, 拓磨, 松下, 英信, 長谷川, 雄基, 岩田, 尚樹, 大河内, 治, 鈴木, 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.1534

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Summary:子宮内膜症は全身の臓器に起こりうるが後腹膜腔は頻度が少なく,癌化はさらに稀である.症例は42歳の1経妊1経産婦で,月経時の右上腹部痛を主訴に受診し,腹部CTで後腹膜腫瘍を指摘された.MRIで上行結腸の外背側に,内部に液体成分と充実性成分を伴う10×9cm大の囊胞性腫瘤を認めた.CA19-9は2,120U/mL,CA125は116U/mLと上昇を認めた.後腹膜腫瘍摘出術を施行,腫瘍は他臓器への浸潤はなく摘出できた.病理所見では茶褐色液体を含む囊胞病変で,組織学的に婦人科癌に類似したadenocarcinomaの所見であり,総合的に子宮内膜症に関連した後腹膜悪性腫瘍と判断した.PET-CTで明らかな集積は認めず,診断も兼ねて子宮全摘+両側付属器切除+大網部分切除術を追加で施行したが,病理学的に悪性所見は認めなかった.術後,子宮内膜癌の術後化学療法に準じTC療法6コースを施行し,現在無再発経過中である.今回われわれは,子宮内膜症の悪性転化も考えられる組織像を呈した後腹膜腫瘍の1例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.1534