原発性肺癌との術前鑑別が困難であった肺放線菌症の1例

症例は67歳,女性.咳嗽と血痰が増悪したため前医を受診し,CTで右肺下葉に37mm大の不整形充実性腫瘤影を認め,PETでSUVmax 8.2の異常集積を認めた.気管支鏡検査で確定診断に至らなかったが,原発性肺癌が疑われ当院へ紹介された.気管支鏡検査を再検したが悪性所見を認めず,培養検査で有意菌を検出しなかった.しかし,6カ月後腫瘤影が42mm大に増大し,SLXが上昇したため,診断と治療目的に胸腔鏡補助下右下葉切除を施行した.術中迅速組織診では炎症性病変との診断であり,病理学的検索で硫黄顆粒を認め,培養検査で嫌気性菌を検出したため肺放線菌症と診断した.追加抗菌薬投与は行わず,術後1年6カ月経過し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 1; pp. 51 - 56
Main Authors 中村, 龍二, 松浦, 求樹, 久保, 友次郎, 岡田, 真典, 藤原, 俊哉, 岡田, 和大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.51

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Summary:症例は67歳,女性.咳嗽と血痰が増悪したため前医を受診し,CTで右肺下葉に37mm大の不整形充実性腫瘤影を認め,PETでSUVmax 8.2の異常集積を認めた.気管支鏡検査で確定診断に至らなかったが,原発性肺癌が疑われ当院へ紹介された.気管支鏡検査を再検したが悪性所見を認めず,培養検査で有意菌を検出しなかった.しかし,6カ月後腫瘤影が42mm大に増大し,SLXが上昇したため,診断と治療目的に胸腔鏡補助下右下葉切除を施行した.術中迅速組織診では炎症性病変との診断であり,病理学的検索で硫黄顆粒を認め,培養検査で嫌気性菌を検出したため肺放線菌症と診断した.追加抗菌薬投与は行わず,術後1年6カ月経過し再発を認めていない.腫瘤形成性の肺放線菌症は肺癌との鑑別が問題となるが,内科的検査で診断に至らず,肺切除により確定診断されることも多い.診断と治療の適切な機会を逸することなく手術を選択することも肝要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.51