歯内治療における術後疼痛の発症にかかわる要因の解析

目的 : 本研究の目的は, 歯内治療における拡大法の違いが術後疼痛の発症に影響するかを検討することである.  材料と方法 : 九州歯科大学附属病院保存治療科を受診した105名の慢性根尖性歯周炎患者を対象として, 5年以上の経験をもつ歯科医師8名が, 根尖狭窄部を保存する拡大方法 (従来法) と根尖狭窄部を意図的に拡大する方法 (意図的拡大法) をそれぞれ53, 52名に対して実施した. 従来法と意図的拡大法における術後疼痛の発症割合の差および根管治療における術後疼痛発症要因について, 解析を行った.  成績 : 従来法と意図的拡大法の2つの術式による術後疼痛の発症割合は, 両群ともに13名 (...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 57; no. 5; pp. 407 - 413
Main Authors 吉居, 慎二, 角舘, 直樹, 鷲尾, 絢子, 末松, 美希, 平田-土屋, 志津, 諸冨, 孝彦, 矢野, 淳也, 北村, 知昭, 福泉, 隆喜, 永吉, 雅人, 西野, 宇信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2014
日本歯科保存学会
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.57.407

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Summary:目的 : 本研究の目的は, 歯内治療における拡大法の違いが術後疼痛の発症に影響するかを検討することである.  材料と方法 : 九州歯科大学附属病院保存治療科を受診した105名の慢性根尖性歯周炎患者を対象として, 5年以上の経験をもつ歯科医師8名が, 根尖狭窄部を保存する拡大方法 (従来法) と根尖狭窄部を意図的に拡大する方法 (意図的拡大法) をそれぞれ53, 52名に対して実施した. 従来法と意図的拡大法における術後疼痛の発症割合の差および根管治療における術後疼痛発症要因について, 解析を行った.  成績 : 従来法と意図的拡大法の2つの術式による術後疼痛の発症割合は, 両群ともに13名 (25%) と差は認められなかった. 年齢による術後疼痛の発症割合は50歳未満で15名 (42%), 50歳以上で11名 (16%) であり, 術前の根管充塡材の有無による術後疼痛の発症割合は根管充塡材ありの場合で20名 (42%), 根管充塡材の場合では6名 (11%) であった. また, 従来法群と意図的拡大法群の治療回数の平均の差についてt検定を実施した結果, 従来法群に比べ意図的拡大法群のほうが有意に治療回数が増加した. 術後疼痛の発症要因についてロジスティック回帰分析を実施した結果, 「患者年齢が50歳未満であること」および「術前の根管充塡材の存在」が, それぞれOdds比で3.9 (95%信頼区間 : 1.269~11.662), 7.9 (95%信頼区間 : 2.469~25.412) であり, これらの要因により術後疼痛の発症頻度が高くなることが示唆された.  結論 : 本研究では意図的拡大法群は従来法群に比べ治療回数が有意に増加したが, 根管拡大法の違いと術後疼痛の発症との関連には統計学的な有意差は認められなかった. しかし, 1) 患者の年齢が50歳未満であること, および2) 根管充塡材が術前に存在することにより, 術後疼痛の発症頻度が高くなることが示唆された. これらの2つの要因は, 術前の状態での術後疼痛の起こるリスクを予測する臨床上の指標となる可能性が示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.57.407