高齢者専門病院におけるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) の検討

目的: 東京都江東高齢者医療センター (以下当センター) の痴呆性疾患治療病棟 (以下痴呆病棟) に入院した症例の臨床像, 特に痴呆の治療・介護上間題になるとされるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) について調査し, 高齢者専門病院の痴呆病棟に求められる機能と役割を検討した.対象: 平成14年6月から同年8月までに当センター, メンタルクリニック外来を初診した101名 (男性41名・女性60名, 平均年齢は78歳) のうち痴呆病棟に入院した26名を対象とした. 方法: 対象となった症例の入院理由・臨床症状 (BPSD...

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Published in順天堂医学 Vol. 49; no. 1; pp. 97 - 101
Main Authors 一宮, 洋介, 江渡, 江, 新井, 平伊, 木村, 通宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2003
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.49.97

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Summary:目的: 東京都江東高齢者医療センター (以下当センター) の痴呆性疾患治療病棟 (以下痴呆病棟) に入院した症例の臨床像, 特に痴呆の治療・介護上間題になるとされるBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) について調査し, 高齢者専門病院の痴呆病棟に求められる機能と役割を検討した.対象: 平成14年6月から同年8月までに当センター, メンタルクリニック外来を初診した101名 (男性41名・女性60名, 平均年齢は78歳) のうち痴呆病棟に入院した26名を対象とした. 方法: 対象となった症例の入院理由・臨床症状 (BPSDの内容) ・治療・経過・臨床診断について検討した.結果: 入院理由はBPSDの治療17例 (65%), 疲弊した介護者を休ませるための短期入院3例 (12%), 検査・診断2例 (8%), その他4例 (15%) であった. BPSDの内容は, 俳徊4例, 攻撃4例, 昼夜リズム障害4例, 感情障害3例, 妄想2例であった. BPSDの治療は薬物療法・個別ケア・生活機能回復訓練を併用したが, 薬物による過鎮静・嚥下障害が問題となった反面, 個別ケアと生活機能回復訓練が昼夜リズム障害に効果を示した. また入院治療にて症状改善したものの家族の受け入れが悪くなり帰れない症例や身体合併症のために施設に戻れない症例が問題となった. 臨床診断は, アルツハイマー病13例 (50%) ・脳血管性痴呆7例 (27%) ・硬膜下血腫3例 (12%) ・前頭側頭型痴呆2例 (8%) ・アルコール依存症1例 (4%) であった.結論: 当センターの痴呆病棟に求められる機能と役割はBPSDの治療と介護者を休ませるための短期入院であるという方向性が示された. ADLを低下することなく, BPSDをコントロールし, 速やかに家庭や施設に帰るための治療計画の整備が今後の課題である。
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.49.97