インプラント治療を併用した限局型慢性歯周炎患者の1症例

緒言:喫煙習慣や咬合性外傷を伴った歯周炎によって30歳代で臼歯を喪失するにいたった患者が,自主的な禁煙努力,継続的な歯周病治療に取り組み,歯周基本治療,治療用義歯による暫間補綴治療,歯周外科治療を受けて歯周組織の安定を獲得した.その後インプラント治療を選択し,咬合関係を再構築した結果,咬合力に対し残存歯の歯周組織が破壊されることなく,定期的なサポーティブペリオドンタルセラピー(Supportive Periodontal Therapy:SPT)を7年間継続している限局型慢性歯周炎の症例を報告する. 症例:患者は初診時36歳の男性.重度の歯周炎により32歳で25,36歳で15を喪失した.全顎的...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 67; no. 4; pp. 214 - 230
Main Authors 郭, 子揚, 金, 奈賢, 古屋, 智紀, 野上, 琴代, 吉成, 伸夫, 各務, 秀明, 中村, 卓, 小山, 尚人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 31.08.2024
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.67.214

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Summary:緒言:喫煙習慣や咬合性外傷を伴った歯周炎によって30歳代で臼歯を喪失するにいたった患者が,自主的な禁煙努力,継続的な歯周病治療に取り組み,歯周基本治療,治療用義歯による暫間補綴治療,歯周外科治療を受けて歯周組織の安定を獲得した.その後インプラント治療を選択し,咬合関係を再構築した結果,咬合力に対し残存歯の歯周組織が破壊されることなく,定期的なサポーティブペリオドンタルセラピー(Supportive Periodontal Therapy:SPT)を7年間継続している限局型慢性歯周炎の症例を報告する. 症例:患者は初診時36歳の男性.重度の歯周炎により32歳で25,36歳で15を喪失した.全顎的に軽度の歯肉腫脹が認められ,Probing Depth(PD)4~6mmの部位率:29.5%,7mm以上部位率:18.6%,Bleeding on Probing(BOP)陽性率:35.9%,17,16,14に3度,37に2度の歯の動揺を認めた.エックス線画像所見では,全顎的に中等度の水平性骨吸収が認められ,17,16,37には深い垂直性骨吸収を認めた.以上の検査結果より,2018年6月にアメリカ歯周病学会(AAP)・ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)より公表された分類に則った日本歯周病学会の分類により,咬合性外傷を伴う限局型慢性歯周炎 ステージⅢグレードCと診断した. 治療方針:歯周基本治療後に再評価検査,治療用義歯の装着,歯周外科治療を施行し,歯周組織の安定を確認してインプラント埋入,SPTへ移行することとした. 治療経過:禁煙を確認して歯周基本治療を行い,保存困難となった17,16,26は歯周基本治療中に抜歯処置を施行し,治療用義歯を装着した.再評価検査後,34-37,47-43に歯肉剝離搔爬術を施行したが,重度の歯槽骨吸収により37は抜歯となった.歯周組織の安定を獲得後,上顎左右側臼歯部にサイナスリフト,インプラントを埋入し,上部構造を装着した結果,良好な咬合関係が得られ,残存歯への咬合負担が減少した.SPTに移行後,7年間継続的な管理を行っているが,安定した経過が得られている. 結論:本症例の成功の要は,患者が高いモチベーションを維持し,定期的なSPTにより天然歯とインプラントの咬合変化に応じて力のコントロールを行えたことにある.今後も,定期的なSPTによる管理を継続することが重要である.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.67.214