左肝切除を行った門脈血栓症を伴う肝内仮性動脈瘤破裂の1例

症例は86歳の女性で,急性胆嚢炎および急性胆管炎の診断で前医に入院後,胆道出血を繰り返し加療目的に当科を紹介受診し,造影CTおよび血管造影検査で門脈血栓症を伴う肝内仮性動脈瘤破裂の診断となった.再出血予防のため肝動脈瘤に対する血管内治療が考慮されたが,門脈および肝動脈血流不全による肝虚血の危険性が危惧されたため施行せず,十分なinformed consentを得たうえで左肝切除の方針とした.術後は切離面に膿瘍形成を認めたが,抗菌薬投与およびドレナージにより軽快し,術後第49病日に退院した.肝動脈瘤は発生頻度が低く,破裂した症例は致死的な経過をたどるため,適切な治療方針の選択が求められる.近年は...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 5; pp. 806 - 811
Main Authors 内藤, 慶, 亀高, 尚, 牧野, 裕庸, 秋山, 貴洋, 深田, 忠臣, 清家, 和裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.806

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Summary:症例は86歳の女性で,急性胆嚢炎および急性胆管炎の診断で前医に入院後,胆道出血を繰り返し加療目的に当科を紹介受診し,造影CTおよび血管造影検査で門脈血栓症を伴う肝内仮性動脈瘤破裂の診断となった.再出血予防のため肝動脈瘤に対する血管内治療が考慮されたが,門脈および肝動脈血流不全による肝虚血の危険性が危惧されたため施行せず,十分なinformed consentを得たうえで左肝切除の方針とした.術後は切離面に膿瘍形成を認めたが,抗菌薬投与およびドレナージにより軽快し,術後第49病日に退院した.肝動脈瘤は発生頻度が低く,破裂した症例は致死的な経過をたどるため,適切な治療方針の選択が求められる.近年は血管内治療が広く施行されているものの,門脈血栓症を合併している肝動脈瘤については肝動脈閉塞に伴う肝虚血のリスクがあり,明確な治療方針は定まっていない.左肝切除を行った門脈血栓症を伴う肝内仮性動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.806