経鼻イレウス管により出血箇所を特定した小腸出血の1例

症例は69歳,男性.下血を主訴に救急搬送され,高度の貧血を認めた.腹部造影CTで,小腸に出血を伴う構造物を指摘され,緊急に腹腔鏡手術を実施した.明らかな器質的病変を特定できず,その後の血管造影検査でも出血点は特定困難であった.3日後に再度下血がみられ,貧血が進行した.小腸内視鏡の実施が困難であったので,経鼻イレウス管留置による,出血部位の特定方法を試行した.イレウス管の先進により,排液が血性に変化したことが確認できた後に緊急手術を施行した.イレウス管先端から小切開し,消化管内視鏡で観察し出血源を特定できた.出血源を特定できない消化管出血は,OGIB (obscure gastrointesti...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 5; pp. 745 - 751
Main Authors 木許, 健生, 杉山, 宏和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.745

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Summary:症例は69歳,男性.下血を主訴に救急搬送され,高度の貧血を認めた.腹部造影CTで,小腸に出血を伴う構造物を指摘され,緊急に腹腔鏡手術を実施した.明らかな器質的病変を特定できず,その後の血管造影検査でも出血点は特定困難であった.3日後に再度下血がみられ,貧血が進行した.小腸内視鏡の実施が困難であったので,経鼻イレウス管留置による,出血部位の特定方法を試行した.イレウス管の先進により,排液が血性に変化したことが確認できた後に緊急手術を施行した.イレウス管先端から小切開し,消化管内視鏡で観察し出血源を特定できた.出血源を特定できない消化管出血は,OGIB (obscure gastrointestinal bleeding)と定義され,小腸出血が多い.病状に応じた検査が必要となるが,小腸内視鏡を実施できないケースでは,出血源の特定は困難となる.本症例では日常的に使いやすい,イレウス管を用いることで,小腸出血の部位を特定することができた.イレウス管を用いた出血源の特定方法は,報告例が少なく有用性の高い方法と考え,今回報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.745