緊急手術を行った91歳下腹部白線ヘルニアの1例

症例は91歳,女性.排便後に失神したため,救急外来を受診した.下腹部正中に手拳大の膨隆を認め,CTで同部に小腸の脱出を認めた.用手的な還納が不能であり,腹壁ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を実施した.ヘルニア内に大網と小腸が嵌頓しており,小腸の一部に壊死を認めた.ヘルニア嚢および血流不良な腸管を切除し,ヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術後3カ月が経過したが,再発はみられていない.白線ヘルニアのほとんどが上腹部に発生し,下腹部の発生例は極めて稀である.下腹部白線ヘルニアの過去の報告例は大部分が初診時に嵌頓しており,特に高齢者ではヘルニア嵌頓で腸管切除を要した場合に術後の死亡率が上昇するため,高齢者であ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 2; pp. 486 - 490
Main Authors 塩井, 義裕, 石岡, 秀基, 伊藤, 浩平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.486

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Summary:症例は91歳,女性.排便後に失神したため,救急外来を受診した.下腹部正中に手拳大の膨隆を認め,CTで同部に小腸の脱出を認めた.用手的な還納が不能であり,腹壁ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を実施した.ヘルニア内に大網と小腸が嵌頓しており,小腸の一部に壊死を認めた.ヘルニア嚢および血流不良な腸管を切除し,ヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術後3カ月が経過したが,再発はみられていない.白線ヘルニアのほとんどが上腹部に発生し,下腹部の発生例は極めて稀である.下腹部白線ヘルニアの過去の報告例は大部分が初診時に嵌頓しており,特に高齢者ではヘルニア嵌頓で腸管切除を要した場合に術後の死亡率が上昇するため,高齢者であっても手術を検討するべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.486