妊娠を契機に発症したインスリノーマの1例

症例は39歳の女性で,妊娠15週に意識障害を呈し,悪阻に伴う低血糖と診断された.ブドウ糖点滴で症状改善し,その後は低血糖症状を認めなかった.妊娠38週で出産し,出産2日後の早朝に再度低血糖による意識障害をきたした.絶食試験陽性でありインスリノーマが疑われたが,dynamic CT・MRI・超音波内視鏡で腫瘍を同定できなかった.選択的動脈内刺激薬注入法の結果をもとに超音波内視鏡で再度検索すると,膵尾部近位に7mm大の淡い低エコー領域を認め,超音波内視鏡ガイド下生検によりインスリノーマと診断した.開腹で脾温存膵尾部切除術を施行した.インスリン分泌量や抵抗性の変動により,妊娠中のインスリノーマは初期...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 3; pp. 473 - 478
Main Authors 深田, 真宏, 久野, 真史, 松橋, 延壽, 東, 敏弥, 横井, 亮磨, 村瀬, 勝俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.473

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Summary:症例は39歳の女性で,妊娠15週に意識障害を呈し,悪阻に伴う低血糖と診断された.ブドウ糖点滴で症状改善し,その後は低血糖症状を認めなかった.妊娠38週で出産し,出産2日後の早朝に再度低血糖による意識障害をきたした.絶食試験陽性でありインスリノーマが疑われたが,dynamic CT・MRI・超音波内視鏡で腫瘍を同定できなかった.選択的動脈内刺激薬注入法の結果をもとに超音波内視鏡で再度検索すると,膵尾部近位に7mm大の淡い低エコー領域を認め,超音波内視鏡ガイド下生検によりインスリノーマと診断した.開腹で脾温存膵尾部切除術を施行した.インスリン分泌量や抵抗性の変動により,妊娠中のインスリノーマは初期に発症し,妊娠期進行に伴い低血糖症状は一時潜在化するものの,出産後に再発することが多い.妊娠中にインスリノーマを発症することはまれで,診断も困難とされるが,妊婦の重症低血糖ではインスリノーマも考慮すべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.473