自己免疫性自律神経節障害の過去・現在・未来
特発性自律神経性ニューロパチーとして分類されてきた急性汎自律神経異常症はギラン・バレー症候群と類似した病態機序が推測されてきた. しかし2000年に特発性自律神経ニューロパチー症例血清から抗自律神経節アセチルコリン受容体 (gAChR) 抗体が検出されることが報告された. これ以降, 自己免疫性自律神経節障害 (AAG) という新しい疾患概念として研究が進められてきた. AAGでは抗gAChR抗体が病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たすことがすでに報告されている. われわれは2012年1月にこの自己抗体測定を本邦で初めてスタートし, 日本におけるAAG症例の臨床像に関する調査に努めてき...
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Published in | 神経治療学 Vol. 38; no. 4; p. 626 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本神経治療学会
2021
Japanese Society of Neurological Therapeutics |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-8443 2189-7824 |
DOI | 10.15082/jsnt.38.4_626 |
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Summary: | 特発性自律神経性ニューロパチーとして分類されてきた急性汎自律神経異常症はギラン・バレー症候群と類似した病態機序が推測されてきた. しかし2000年に特発性自律神経ニューロパチー症例血清から抗自律神経節アセチルコリン受容体 (gAChR) 抗体が検出されることが報告された. これ以降, 自己免疫性自律神経節障害 (AAG) という新しい疾患概念として研究が進められてきた. AAGでは抗gAChR抗体が病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たすことがすでに報告されている. われわれは2012年1月にこの自己抗体測定を本邦で初めてスタートし, 日本におけるAAG症例の臨床像に関する調査に努めてきた. そのなかでAAGの多様な臨床経過, 広範あるいは部分的な自律神経症状などの障害パターン, 自律神経系外の症候 (中枢神経系障害, 感覚障害, 内分泌障害) や併存症 (膠原病, 腫瘍など) を有する症例, 小児症例などheterogeneityを把握しつつある. また各種膠原病においては潜在的に抗gAChR抗体陽性症例が存在することもわかっており, こういった「多様性」が本症の診断のしにくさ, そしてしばしば難治化に繋がると考えている. 我々は現在, 1) 自己抗体の病原性と免疫病態の検証, 2) AAGの病態モデル開発, 3) 小児AAG症例および膠原病における抗gAChR抗体陽性症例における臨床的特徴の解析, を専門分野横断的に試みている. こういった作業の積み重ねが診断基準作成, 治療ストラテジーの確立に貢献すると考えている. AAGの治療に関するエビデンスの確立は今後の課題である. これまでに免疫療法の有効性が報告されているが, それは症例報告レベルのものが多い. 本邦における抗体陽性AAG症例に対する治療はまず血漿浄化療法, 免疫グロブリン静注療法, ステロイドパルスのいずれかによって免疫治療が導入され, その後は経口プレドニゾロンの内服を開始, 減量されているケースが多い. このような「複合的免疫治療」の導入が推奨される. |
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ISSN: | 0916-8443 2189-7824 |
DOI: | 10.15082/jsnt.38.4_626 |