ホルマリン注入固定法で先進部に早期癌を指摘し得た成人大腸重積症の1例

症例は88歳女性。下痢と食思不振が1ヵ月続き,粘血便も伴ってきたため前医に緊急入院した。CT検査で大腸重積症と診断されたが,明らかな先進部病変は指摘されなかった。内視鏡的整復を試みたものの整復できず当院搬送となった。臍周囲に腫瘤を触知し同部の圧痛を認め,搬送当日緊急開腹手術を行った。腫瘤は回盲部が横行結腸中央まで重積しており,結腸右半切除術を施行した。切除検体は重積腸管を整復せず,回腸断端から80mLのホルマリン固定液を注入した。全体をホルマリン液に浸透させ12時間後長軸方向に切開したところ,先進部に35×25mmの0–Ⅱa型病変を認め,病理学的に深達度Tisの高分化管状腺癌と診断された。成人...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 40; no. 7; pp. 869 - 872
Main Authors 林, 忠毅, 原田, 岳, 森, 弘樹, 大塚, 駿介, 小澤, 享史, 西脇, 由朗, 宮崎, 真一郎, 高木, 徹, 露木, 肇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.11.2020
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.40.869

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Summary:症例は88歳女性。下痢と食思不振が1ヵ月続き,粘血便も伴ってきたため前医に緊急入院した。CT検査で大腸重積症と診断されたが,明らかな先進部病変は指摘されなかった。内視鏡的整復を試みたものの整復できず当院搬送となった。臍周囲に腫瘤を触知し同部の圧痛を認め,搬送当日緊急開腹手術を行った。腫瘤は回盲部が横行結腸中央まで重積しており,結腸右半切除術を施行した。切除検体は重積腸管を整復せず,回腸断端から80mLのホルマリン固定液を注入した。全体をホルマリン液に浸透させ12時間後長軸方向に切開したところ,先進部に35×25mmの0–Ⅱa型病変を認め,病理学的に深達度Tisの高分化管状腺癌と診断された。成人大腸重積症では,術前検査で病変が明らかでなくても先進部の詳細な病理学的検索を加える必要があり,そのためにホルマリン注入固定法は有用である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.40.869