“非典型” たこつぼ心筋障害の臨床的検討
たこつぼ心筋障害の中には, 通常の心尖部の壁運動異常(無収縮)と異なり, 心尖部に収縮を認める非典型的な壁運動異常を呈する症例も報告されている. 従来の典型例と非典型例は同じ疾患と考えてよいのかという点を検証するため, それぞれの臨床像を比較検討した. 1997年6月から2005年3月までに経験した, たこつぼ心筋障害40例のうち, 非典型例は7例(男性1例, 女性6例)であった. 両群での性, 年齢, 高血圧や糖尿病の有無に差はなかった. 急性期の冠動脈造影施行例中, 典型例の27. 7%, 非典型例の42. 9%が有意狭窄病変を有する例であったが, 両群に差を認めなかった. アセチルコリン...
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Published in | 心臓 Vol. 42; no. 8; pp. 1048 - 1056 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2010
日本心臓財団 |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.42.1048 |
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Summary: | たこつぼ心筋障害の中には, 通常の心尖部の壁運動異常(無収縮)と異なり, 心尖部に収縮を認める非典型的な壁運動異常を呈する症例も報告されている. 従来の典型例と非典型例は同じ疾患と考えてよいのかという点を検証するため, それぞれの臨床像を比較検討した. 1997年6月から2005年3月までに経験した, たこつぼ心筋障害40例のうち, 非典型例は7例(男性1例, 女性6例)であった. 両群での性, 年齢, 高血圧や糖尿病の有無に差はなかった. 急性期の冠動脈造影施行例中, 典型例の27. 7%, 非典型例の42. 9%が有意狭窄病変を有する例であったが, 両群に差を認めなかった. アセチルコリンによる冠攣縮誘発率にも差を認めなかった. 発症の誘因として多いと報告されている精神的ストレスや身体的ストレスについても差を認めなかった. 両群とも, 壁運動異常はほぼ全例3週間以内に回復した. 死亡例は典型例で, 4例認めたが全例基礎疾患によるもので, 非典型例の死亡例はなく予後に関しても両群間で差を認めなかった. 心筋シンチグラフィの所見は, 両群とも壁運動異常領域での201Tlの所見はわずかな集積の低下のみで, 123I-BMIPPでは局所壁運動異常に一致して異常所見を認めたが, 123I-MIBGでは壁運動の保たれている心尖部を含めて広範囲な欠損像を認めた. たこつぼ心筋障害の一部には, 左室心尖部の壁運動異常が認められない例があるが, 左室心尖部の壁運動異常の有無で臨床像に差は認められなかった. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.42.1048 |