診断が困難であった特発性眼窩炎症による二次性三叉神経痛の1症例

三叉神経痛をきたす疾患の一つに占拠性病変などによる二次性三叉神経痛がある.今回,三叉神経第1枝(V1)領域の痛みの原因として副鼻腔腫瘍性病変の眼窩内浸潤を疑い手術を行ったが症状は改善せず,最終的に特発性眼窩炎症と診断した症例を経験した.症例は65歳の男性.4カ月前に右上眼瞼から頭頂部に痛みが出現し,2週間前より疼痛悪化とともに右眼痛と複視とを伴発した.近医でのステロイド点眼治療により眼痛は消失したが,顔面痛と複視は継続し,当院いたみセンターを受診した.CT画像で右篩骨洞から眼窩内に骨破壊を伴う占拠性病変があり,悪性疾患が否定できないため腫瘍摘出術を施行した.病理診断では異型細胞や肉芽腫,真菌の...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 30; no. 8; pp. 215 - 219
Main Authors 草間, 宣好, 祖父江, 和哉, 加藤, 利奈, 佐藤, 玲子, 加古, 英介, 杉浦, 健之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本ペインクリニック学会 25.08.2023
日本ペインクリニック学会
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ISSN1340-4903
1884-1791
DOI10.11321/jjspc.23-0009

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Summary:三叉神経痛をきたす疾患の一つに占拠性病変などによる二次性三叉神経痛がある.今回,三叉神経第1枝(V1)領域の痛みの原因として副鼻腔腫瘍性病変の眼窩内浸潤を疑い手術を行ったが症状は改善せず,最終的に特発性眼窩炎症と診断した症例を経験した.症例は65歳の男性.4カ月前に右上眼瞼から頭頂部に痛みが出現し,2週間前より疼痛悪化とともに右眼痛と複視とを伴発した.近医でのステロイド点眼治療により眼痛は消失したが,顔面痛と複視は継続し,当院いたみセンターを受診した.CT画像で右篩骨洞から眼窩内に骨破壊を伴う占拠性病変があり,悪性疾患が否定できないため腫瘍摘出術を施行した.病理診断では異型細胞や肉芽腫,真菌の所見はなく,炎症性細胞の浸潤がみられた.術後は,副鼻腔炎として抗菌薬治療を行ったが,顔面痛と複視が再燃した.このため特発性眼窩炎症を疑い,プレドニゾロンの内服を開始したところ,これらの症状はともに改善した.特発性眼窩炎症は眼窩部に生じる非特異的炎症性疾患であるが,まれに副鼻腔への浸潤をきたすことが報告されており,鑑別疾患として考慮する必要がある.
ISSN:1340-4903
1884-1791
DOI:10.11321/jjspc.23-0009