胸膜中皮腫の病理診断

アスベスト (石綿) は, その曝露により組織に線維化や発がん性という性格をもち, 非腫瘍性疾患として石綿肺, 良性石綿胸水, 胸膜肥厚斑 (びまん性胸膜肥厚) などを, 腫瘍性疾患としては肺癌, 中皮腫を発症する. これらアスベスト関連疾患は潜伏期間が長く, 本邦でのアスベスト使用量との関係から, 今後増加すると予想されている.アスベスト関連腫瘍の代表である, 胸膜中皮腫は早期例では壁側胸膜上に多発小結節状に出現し, その後, 肺を包み込むように肥厚性に増殖し, 残存肺は胸膜面全体から圧迫され縮小する. 進行例では周囲組織への浸潤, リンパ節転移や血行性に転移する. 中皮腫の確定診断は, 病...

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Published in順天堂医学 Vol. 52; no. 3; pp. 334 - 341
Main Authors 須田, 耕一, 泉, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2006
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.52.334

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Summary:アスベスト (石綿) は, その曝露により組織に線維化や発がん性という性格をもち, 非腫瘍性疾患として石綿肺, 良性石綿胸水, 胸膜肥厚斑 (びまん性胸膜肥厚) などを, 腫瘍性疾患としては肺癌, 中皮腫を発症する. これらアスベスト関連疾患は潜伏期間が長く, 本邦でのアスベスト使用量との関係から, 今後増加すると予想されている.アスベスト関連腫瘍の代表である, 胸膜中皮腫は早期例では壁側胸膜上に多発小結節状に出現し, その後, 肺を包み込むように肥厚性に増殖し, 残存肺は胸膜面全体から圧迫され縮小する. 進行例では周囲組織への浸潤, リンパ節転移や血行性に転移する. 中皮腫の確定診断は, 病理組織学的になされるが, その組織像は多彩で上皮型, 肉腫型および両成分が混在する二相型の3つの基本組織型に分類され, さらに各型は幾つかの組織構造を呈する.病理組織学的診断には通常のヘマトキシリン・エオジン (H. E) 染色とともに肺腺癌や他の腫瘍との鑑別に組織化学や免疫組織化学が用いられている. 中皮腫の組織化学的特徴は細胞表面にアルシアン・ブルー染色やコロイド鉄染色により陽性を示すヒアルロン酸を認める. 肺腺癌との鑑別では, カルレチニン, サイトケラチン5/6, WT1, D2-40が中皮腫に陽性, 肺腺癌には陰性を示し, これらは感受性, 特異性に優れている. また中皮腫はケラチンとビメンチン両方の陽性率が高く, 肉腫との鑑別に有用である.胸膜中皮腫は体腔液を伴うことが多く, 上皮型中皮腫では, 胸水からの細胞診断が可能であるが, 腺癌との鑑別が困難なこともある. 二相型や肉腫型では胸水中に異型細胞を認めないことも多い.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.52.334