有痛性化学療法誘発性末梢神経障害に対し高用量デュロキセチンが著効した1例

化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は神経障害痛の発症の契機となり,薬物療法抵抗性であることが少なくない.有痛性CIPNは患者の日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)を著しく低下させるほか,抗がん剤の減量や休薬,中止を余儀なくさせるなどがん治療の阻害因子ともなるため,治療法の確立が望まれている.セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるデュロキセチンは糖尿病性ニューロパチーに対する第一選択薬であり抗うつ薬でもあるが,有痛性CIPNに対しても有効性が期待されている.わが国では適応疾患にかかわらず60 mgがデュロキセチンの1日投与上限量であるが,米国では抗うつ薬として高用量(120...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 23; no. 1; pp. 29 - 32
Main Authors 大淵, 麻衣子, 小暮, 孝道, 山田, 芳嗣, 穂積, 淳, 阿部, 博昭, 住谷, 昌彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本ペインクリニック学会 2016
日本ペインクリニック学会
Subjects
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ISSN1340-4903
1884-1791
DOI10.11321/jjspc.15-0023

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Summary:化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は神経障害痛の発症の契機となり,薬物療法抵抗性であることが少なくない.有痛性CIPNは患者の日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)を著しく低下させるほか,抗がん剤の減量や休薬,中止を余儀なくさせるなどがん治療の阻害因子ともなるため,治療法の確立が望まれている.セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるデュロキセチンは糖尿病性ニューロパチーに対する第一選択薬であり抗うつ薬でもあるが,有痛性CIPNに対しても有効性が期待されている.わが国では適応疾患にかかわらず60 mgがデュロキセチンの1日投与上限量であるが,米国では抗うつ薬として高用量(120 mg)が承認され,その安全性が確立されている.有痛性CIPNに対する臨床試験として,高用量デュロキセチンを使用しその効果や副作用の発現を1例の患者について評価したところ用量依存性に鎮痛効果を示し,さらにADLとQOLの改善効果は内服中止後も持続した.副作用の発現は軽度の嘔気のみであった.今後の症例の追加が必要であるが,高用量デュロキセチンは有痛性CIPN治療の選択肢の一つになる可能性を示唆する.
ISSN:1340-4903
1884-1791
DOI:10.11321/jjspc.15-0023