トルバプタン投与により遷延する肝機能障害をきたした1例

症例は61歳男性.常染色体優性多発性囊胞腎と診断され,トルバプタン60 mg/日を開始した.11週後の血液検査で肝機能障害を認め,2日後トルバプタンの内服を中止した.しかし投与中止4週後の血液検査でトランスアミナーゼは更に上昇したために当科紹介となった.血液検査,腹部超音波検査,腹部造影CT検査で慢性肝障害,肝硬変を示唆する所見を認めなかった.ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎を示唆する検査所見もみられなかった.ウルソデオキシコール酸を内服開始したが,肝機能障害は遷延化したため約2カ月後に肝生検を施行し,トルバプタンによる薬物性肝障害と診断した.定期的に血液検査を施行したところ,トルバプタン中止約...

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Published in肝臓 Vol. 62; no. 2; pp. 72 - 79
Main Authors 山名, 陽一郎, 水谷, 卓, 石井, 大雄, 森山, 光彦, 金子, 朋弘, 増崎, 亮太, 松本, 直樹, 神田, 達郎, 本田, 真之, 楡井, 和重, 熊川, まり子, 佐々木, 玲奈, 山上, 裕晃, 高橋, 央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.02.2021
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.62.72

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Summary:症例は61歳男性.常染色体優性多発性囊胞腎と診断され,トルバプタン60 mg/日を開始した.11週後の血液検査で肝機能障害を認め,2日後トルバプタンの内服を中止した.しかし投与中止4週後の血液検査でトランスアミナーゼは更に上昇したために当科紹介となった.血液検査,腹部超音波検査,腹部造影CT検査で慢性肝障害,肝硬変を示唆する所見を認めなかった.ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎を示唆する検査所見もみられなかった.ウルソデオキシコール酸を内服開始したが,肝機能障害は遷延化したため約2カ月後に肝生検を施行し,トルバプタンによる薬物性肝障害と診断した.定期的に血液検査を施行したところ,トルバプタン中止約4カ月後にトランスアミナーゼは正常範囲内への改善がみられた.トルバプタン投与例では肝機能障害出現に注意するとともに,トルバプタン中止後も肝機能障害が遷延化する可能性に留意する必要があると考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.62.72