ラドン温泉療法の適応症とそのメカニズムに関する最近の研究動向

  三朝(鳥取県)の温泉療法は,バドガスタイン(オーストリア)やモンタナ(アメリカ)の坑道療法とともにラドン療法(特にラドン高濃度熱気浴療法)として世界的に有名である.ラドン療法の適応症には,活性酸素種に起因する呼吸器・疼痛・消化器・慢性変性・老年性などに関わる様々な疾患が含まれるが,その多くは経験的処方に基づいている.このため,筆者らはラドンと子孫核種に関連した被ばくの主要経路の特定や体内挙動の実験的・数理的な検討を行い,吸入などにより生じる生体反応と組織・臓器吸収線量との関係をより定量的に評価し,適応症に関わるメカニズムの解明と新たな探索の基礎研究を進めてきた.その結果,メカニズムとしては...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 88; no. 2; pp. 57 - 72
Main Authors 片岡, 隆浩, 山岡, 聖典, 神﨑, 訓枝, 迫田, 晃弘, 光延, 文裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 25.05.2025
日本温泉気候物理医学会
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ISSN0029-0343
1884-3697
DOI10.11390/onki.2363

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Summary:  三朝(鳥取県)の温泉療法は,バドガスタイン(オーストリア)やモンタナ(アメリカ)の坑道療法とともにラドン療法(特にラドン高濃度熱気浴療法)として世界的に有名である.ラドン療法の適応症には,活性酸素種に起因する呼吸器・疼痛・消化器・慢性変性・老年性などに関わる様々な疾患が含まれるが,その多くは経験的処方に基づいている.このため,筆者らはラドンと子孫核種に関連した被ばくの主要経路の特定や体内挙動の実験的・数理的な検討を行い,吸入などにより生じる生体反応と組織・臓器吸収線量との関係をより定量的に評価し,適応症に関わるメカニズムの解明と新たな探索の基礎研究を進めてきた.その結果,メカニズムとしては,ラドン吸入により生じる少量の酸化ストレスに伴う一連の適度な生理刺激作用に関して解明されつつある.すなわち,抗酸化・免疫調節・損傷修復機能の亢進,抗炎症・ホルモン分泌・循環代謝の促進,アポトーシス・熱ショックタンパク質の誘導などである.また,新たな適応症として,炎症性・神経障害性疼痛,炎症性浮腫,胃粘膜損傷,潰瘍性大腸炎,高尿酸血症,1型糖尿病,肝・腎障害,一過性脳虚血発作,うつ病などの可能性が示唆される.さらに,ラドン吸入と抗酸化剤や治療剤との併用による疾患の抑制効果に関して,いずれもその効果を高めることが示唆される.副作用の強い薬剤に対して減薬効果が期待できるため,通常の治療に対するラドン療法の併用効果の更なる臨床的検証が求められる.
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki.2363