僧帽弁置換術が有効であった低流量・低圧較差高度僧帽弁狭窄症の1例

症例は73歳,女性.僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁交連切開術後,また,慢性心不全のため3回の入院加療歴があり,普段からNYHA Ⅲ度の息切れがある.安静時の息切れ,起座呼吸が出現したため救急搬送された.胸部X線上,著明な心拡大と肺うっ血像を認め,慢性心不全の急性増悪と判断した.経胸壁心エコー図上,僧帽弁のdoomingや左房,右心系の著明な拡大から既知の僧帽弁狭窄の関与が疑われたが,平均左房-左室間圧較差は軽度であった.臨床所見と検査所見に乖離がみられたため,3次元経食道心エコー図,ハンドグリップ負荷心エコー図を施行した.3次元planimetry法では僧帽弁口面積1.32 cm2と重度狭窄の所見...

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Published in心臓 Vol. 51; no. 12; pp. 1283 - 1289
Main Authors 須藤, 晃正, 深町, 大介, 右田, 卓, 奥村, 恭男, 相澤, 芳裕, 門野, 越, 田中, 正史, 齋藤, 佑記, 藤戸, 秀聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.12.2019
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.51.1283

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Summary:症例は73歳,女性.僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁交連切開術後,また,慢性心不全のため3回の入院加療歴があり,普段からNYHA Ⅲ度の息切れがある.安静時の息切れ,起座呼吸が出現したため救急搬送された.胸部X線上,著明な心拡大と肺うっ血像を認め,慢性心不全の急性増悪と判断した.経胸壁心エコー図上,僧帽弁のdoomingや左房,右心系の著明な拡大から既知の僧帽弁狭窄の関与が疑われたが,平均左房-左室間圧較差は軽度であった.臨床所見と検査所見に乖離がみられたため,3次元経食道心エコー図,ハンドグリップ負荷心エコー図を施行した.3次元planimetry法では僧帽弁口面積1.32 cm2と重度狭窄の所見を認めた.ハンドグリップ負荷心エコー図では,高度の肺動脈圧上昇の所見は得られなかったが,収縮期三尖弁圧較差の上昇と症状の出現があるため,重度の僧帽弁狭窄が心不全に関与していると考え,僧帽弁置換術,三尖弁輪形成術を施行した.術後,息切れの症状は改善し,術後のハンドグリップ負荷心エコー図で収縮期三尖弁圧較差は低下した.右心不全を合併する重度の僧帽弁狭窄症において,低心拍出の影響により,ドプラ心エコー図の圧較差による重症度診断や,運動負荷心エコー図による手術適応の判断が困難であることがある.そのような病態の評価に,3次元経食道心エコー図による形態学的評価を含めた,多角的な重症度診断が必要と考えられた.また,僧帽弁置換術が有効であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.1283